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脳卒中後の麻痺、自宅でできるリハビリとは?【片手でもできる運動5選】

はじめに

脳卒中を経験して退院したあと、「病院のリハビリはなくなったけど、自宅でも何か続けたい」「家族に手を動かす練習を教えてあげたい」と思っている方は多いのではないでしょうか。

自宅でのリハビリ(自主練習)は、回復をサポートするうえでとても大切です。毎日少しずつ体を動かすことで、筋力の低下を防いだり、動きの感覚を取り戻すきっかけになったりします。

この記事では、片手(非麻痺側の手)を使えば麻痺のある手足も一緒に動かせる運動を5つご紹介します。道具は不要で、椅子に座ったままできるものを中心に選びました。

はじめにご確認ください 本記事で紹介する運動は、ある程度座位(椅子などに座った姿勢)が安定しており、担当の医師・理学療法士から自主練習の許可が出ている方を対象としています。運動を始める前に、必ず担当の専門家にご相談ください。


自宅リハビリを始める前に知っておきたいこと

脳卒中後の麻痺はなぜ回復するの?

脳卒中後の麻痺は、脳の神経細胞がダメージを受けることで起こります。ただし、脳には「神経可塑性」と呼ばれる、繰り返し練習することで神経のつながりを新しく作っていく力があります。これが、リハビリで動きが改善していく理由のひとつです。

つまり、「動かす練習を繰り返すこと」が脳への刺激となり、回復を後押しすることにつながります。

自主練習のポイント3つ

① 毎日少しずつ続けることが大切 1回にたくさんやるよりも、毎日10〜20分続けるほうが効果的です。

② 無理をしない 痛みがある・体調が優れない・疲れているときは休みましょう。「少しがんばる」は大切ですが、「無理をする」は禁物です。

③ 担当のリハビリスタッフに確認する 自分の状態に合っているかどうか、必ず担当の理学療法士や作業療法士に確認してから行いましょう。


運動5選


運動① 両手組み体操

目的: 麻痺した手・腕を健側(非麻痺側)の手でサポートしながら動かし、肩・肘・手首の動きを維持・改善する

やり方:

  1. 椅子に浅めに腰かけ、背筋を伸ばして座ります。
  2. 非麻痺側の手で麻痺側の手をやさしく握り、指を組みます。
  3. 両腕をゆっくり前に伸ばし、そのまま頭の上まで持ち上げます。
  4. ゆっくりと元の位置に戻します。

回数の目安: 10回 × 1〜2セット

ポイント:

  • 肩に痛みがある方は、痛みの出ない範囲で行いましょう。
  • 麻痺側の肘が曲がってしまう場合は、非麻痺側の手で肘を伸ばすようにサポートしてあげましょう。
  • ゆっくりとした動作で行うことが大切です。

なぜこの運動が有効なの? 麻痺側の腕を「動かさないままにしておく」と、関節が固まったり(拘縮、筋肉が萎縮したりするリスクが高まります。健側の手でサポートしながら動かすことで、関節の動きを維持しながら脳への刺激を与えることができます。


運動② 足首のポンプ運動

目的: 麻痺側の足首を動かし、血行促進・むくみの予防・足首の柔軟性の維持を図る

やり方:

  1. 椅子に座り、足を床に軽く置きます(力を抜いた状態でOKです)。
  2. 麻痺側の足首を、つま先を上に向ける(背屈)→ つま先を下に向ける(底屈)という動きで繰り返します。
  3. 動きにくい場合は、非麻痺側の足の甲を麻痺側のつま先の下に軽く添えて、足首が動くようにサポートしてみましょう。

回数の目安: 20〜30回 × 1〜2セット

ポイント:

  • できるだけゆっくり、動きを意識しながら行いましょう。
  • 麻痺が強くてほとんど動かない場合でも、「動かそうとする」意識を持つことが大切です。
  • テレビを見ながらでも取り組みやすい運動です。

なぜこの運動が有効なの? 足首を動かすことでふくらはぎの筋肉(腓腹筋)が働き、足から心臓へ血液を戻すポンプ作用が促されます。特に脳卒中後は深部静脈血栓症(足の静脈に血の塊ができる状態)の予防という観点でも、足首を積極的に動かすことが推奨されています。


運動③ 座位での重心移動(体重移動)

目的: 座ったままバランス感覚を鍛え、立ち上がり・歩行の準備をする

やり方:

  1. 椅子に少し浅めに腰かけ、両足を床につけます。
  2. 体幹をゆっくり右に傾け、右のお尻に体重を乗せます(1〜2秒キープ)。
  3. ゆっくりと中央に戻します。
  4. 今度は左に傾けて左のお尻に体重を移し、また中央に戻します。

回数の目安: 左右交互に10回(合計20回) × 1セット

ポイント:

  • 体が大きく傾いて転倒しないように、最初は壁際やテーブルの前で行いましょう。
  • 前後の重心移動(上半身を少し前→後ろ)も、慣れてきたら加えてみましょう。
  • 頭が一緒に傾いてしまわないように、目線は正面を保つよう意識します。

なぜこの運動が有効なの? 脳卒中後は、麻痺側への体重のかけ方が減り、座位や立位のバランスが崩れやすくなります。意識的に麻痺側へも重心を移す練習をすることで、バランス機能の回復をサポートします。


運動④ 麻痺側の手・指のストレッチ

目的: 手指の関節の柔軟性を維持し、握り込み(痙縮による手指の屈曲・手がグーのまま開かなくなる状態)を予防・緩和する

やり方:

  1. 椅子に座り、麻痺側の腕をひざの上に置きます。
  2. 非麻痺側の手で、麻痺側の手の指を一本ずつやさしく伸ばします。痛みが出ない程度に、ゆっくりと伸ばしましょう(5〜10秒キープ)。
  3. 全部の指が終わったら、今度は手首を手の甲の方向(背屈)へゆっくり曲げ、5〜10秒キープします。
  4. 反対に手のひら方向(掌屈)へも軽く動かします。

回数の目安: 1日1〜2回(朝・夕など)

ポイント:

  • 「痛みが出るまで伸ばす」のは逆効果です。気持ちよく伸びる感覚を目安にしてください。
  • 痙縮が強い時間帯は無理せず、体が温まっている入浴後などに行うと動かしやすい場合があります。
  • 指が白くなったり、異常なほど痛む場合はすぐに中止して専門家に相談しましょう。

なぜこの運動が有効なの? 脳卒中後は痙縮により手指が握り込んだまま開きにくくなることがあります(詳しくは本ブログ第3回「痙縮とは?」をご参照ください)。定期的なストレッチで関節の動きを保つことは、日常生活動作の維持に直結します。


運動⑤ 膝の曲げ伸ばし(座位での足上げ)

目的: 麻痺側の太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛え、立ち上がりや歩行の力をつける

やり方:

  1. 椅子に座り、背もたれを使わずに座ります。
  2. 麻痺側の足をゆっくり膝を伸ばしながら持ち上げます(太ももが少し浮く程度でOK)。
  3. 2〜3秒キープしてから、ゆっくりと下ろします。

回数の目安: 10〜15回 × 1〜2セット

ポイント:

  • うまく動かせない場合は、非麻痺側の足を麻痺側の足首の下に添えて、少しサポートしながら行ってみましょう。
  • 膝を伸ばしきろうとしなくてもOKです。「太ももの前に力を入れようとする」意識を持つことが大切です。
  • 腰が丸まってしまわないよう、背筋を意識してください。

なぜこの運動が有効なの? 大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)は立ち上がり・歩行のどちらにも欠かせない筋肉です。座位で繰り返し練習することで、麻痺側の筋力低下を防ぐとともに、脳への運動指令のルートを再建する手助けになります。


運動中・運動後の注意サイン

以下の症状が出た場合は、すぐに運動をやめて安静にしてください。また、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。

  • 急に頭痛がひどくなった
  • めまいや吐き気がする
  • 胸が苦しい・動悸がする
  • 手足のしびれや脱力がいつもより強くなった
  • 関節に強い痛みが出た

まとめ

今回ご紹介した5つの運動をまとめると、以下のとおりです。

運動主な目的場所
① 両手組み体操麻痺側の肩・腕の動きを維持する椅子(座位)
② 足首のポンプ運動血行促進・足首の柔軟性維持椅子(座位)
③ 座位での重心移動バランス感覚を鍛える椅子(座位)
④ 手・指のストレッチ手指の関節の柔軟性維持椅子(座位)
⑤ 膝の曲げ伸ばし太ももの筋力をつける椅子(座位)

どれか1つから始めるだけでも構いません。「今日も少し動いた」という積み重ねが、回復への一歩になります。

無理のない範囲で、毎日の習慣に取り入れてみてください。そして定期的に担当のリハビリスタッフに状況を報告し、自分の状態に合った練習を一緒に考えていただくことをおすすめします。


参考文献

  1. Langhorne P, Bernhardt J, Kwakkel G. Stroke rehabilitation. The Lancet. 2011;377(9778):1693-1702.
  2. Kwakkel G, Kollen BJ, Krebs HI. Effects of robot-assisted therapy on upper limb recovery after stroke: a systematic review. Neurorehabilitation and Neural Repair. 2008;22(2):111-121.
  3. 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会(編)『脳卒中治療ガイドライン2021』協和企画; 2021.
  4. 奈良勲(監修)『標準理学療法学 専門分野 神経・筋理学療法学』第4版. 医学書院; 2018.
  5. Ada L, Canning CG, Low SL. Stroke patients have selective muscle weakness in shortened range. Brain. 2003;126(3):724-731.

免責事項

本記事の内容は、筆者個人の経験・見解および公開されている情報に基づくものであり、医療アドバイスを目的としたものではありません。本記事で紹介している運動の実施にあたっては、必ず担当の医師・理学療法士・専門家にご相談のうえ、自分の状態に合った方法で行ってください。運動中に体調の変化を感じた場合はすぐに中止してください。


ほーりーの脳卒中リハビリテーションブログ 筆者:脳卒中認定理学療法士(北陸の総合病院勤務・臨床13年目)

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hrthryk0905@gmail.com
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病院で10年以上勤務。認定理学療法士(脳卒中)取得。病院では新人や若手セラピストの教育や指導を担当しています。
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