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脳卒中患者の初回評価の進め方【新人PTが迷わないステップ順】

はじめてこのブログに来てくださった方も、いつも読んでくださっている方も、ありがとうございます。北陸の総合病院で働く理学療法士の「ほーりー」です。

今回のテーマは、脳卒中患者さんの初回評価の進め方です。

「担当になったけど、何から手をつければいいかわからない」「評価の順番はどうすれば正解なの?」——新人のころ、私自身も同じ不安を抱えていました。脳卒中患者さんは評価すべき項目が多く、さらにリスク管理も求められるため、慣れるまでは頭の中が整理できないことも多いと思います。

この記事では、私が13年の臨床経験の中で積み上げてきた初回評価の流れをステップ順に解説します。「この順番で進めれば迷わない」という実践的な内容にしていますので、新人PTの方はぜひ手元に置いておいてください。


なぜ「順番」が大事なのか

初回評価は、患者さんとはじめて向き合う場です。ここで得た情報がその後のリハビリ計画全体の土台になります。評価の順番を間違えると、患者さんに不必要な負担をかけたり、リスクの高い状態で動作評価を行ってしまうことにもなりかねません。

基本的な考え方は「安全確認→全体像の把握→各論の評価」です。いきなり細かい評価に飛び込まず、まず安全かどうかを確認し、大まかな状態像をつかんでから詳細に入る——この流れを体に染み込ませることが、臨床で迷わない評価の第一歩です。


STEP 0|評価室に入る前に——カルテ・情報収集

評価室に入る前の準備が、初回評価の質を大きく左右します。カルテを読まずに患者さんのベッドサイドに向かうのは避けましょう。

確認すべき情報

発症に関する情報として、脳卒中の種類(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)、発症日時、発症様式(突然か緩徐か)、急性期治療の内容(t-PA投与の有無、手術の有無など)を確認します。

画像所見については、CT・MRIで病巣の部位と大きさを確認します。病巣の部位によっておおよその後遺症が予測できます。たとえば内包後脚の病変であれば運動麻痺が強く出やすく、頭頂葉であれば感覚障害や無視が出やすいといった傾向があります。事前に「この患者さんにはどんな症状が出ているか」を予測しておくことで、評価の精度が上がります。

既往歴・内服薬の確認も欠かせません。糖尿病・高血圧・心疾患などの既往は、運動負荷時のリスク管理に直接関わります。また抗凝固薬・降圧薬などの内服は、バイタルの変動パターンや出血リスクの把握に必要です。

生活背景として、発症前のADL(日常生活動作)の自立度、職業、家族構成、自宅の環境(戸建て・マンション、段差の有無など)を把握しておきます。退院後の生活像を見据えた目標設定のために、この情報は初回から必要です。

ポイント:カルテ確認にかける時間は10〜15分を目安に。完璧に読み込もうとせず、「安全に評価できるか」「どんな症状が予測されるか」を軸に絞って確認しましょう。


STEP 1|評価室に入ったら——意識・バイタルの確認

どんな評価よりも先に行うのが、意識レベルとバイタルサインの確認です。ここで問題があれば、その日の評価自体を中止・縮小する判断が必要になります。

意識レベルの確認

意識レベルの評価には**JCS(Japan Coma Scale)**がよく使われます。

  • JCS 0:清明(意識障害なし)
  • JCS I(1桁):刺激しなくても覚醒している(軽度の意識障害)
  • JCS II(2桁):刺激すると覚醒する
  • JCS III(3桁):刺激しても覚醒しない

回復期リハビリ病棟に入院してくる段階では多くの場合JCS 0〜I程度ですが、体調不良時には変化することもあります。初回評価時は必ず確認する習慣をつけましょう。

バイタルサインの確認

確認すべきバイタルは、血圧・脈拍・SpO2・呼吸数・体温の5項目です。

特に脳卒中患者さんでは血圧の管理が重要です。高血圧を背景に発症していることが多く、また降圧薬の影響で起立性低血圧が起きやすいことも覚えておきましょう。目安として、収縮期血圧が200mmHgを超える場合や、90mmHg未満に低下している場合は、リハビリを中止・延期する判断が必要です(施設のプロトコルに従って判断してください)。

SpO2が90%を下回る場合は呼吸状態の悪化が疑われます。脈拍が著しく不整な場合は心房細動など不整脈の可能性もあるため、看護師・医師への報告が必要です。

ポイント:バイタル確認は「儀式」ではなく「安全の確認」です。数値を見たら「なぜこの値なのか」を考える習慣を早めにつけましょう。


STEP 2|全体像をつかむ——運動麻痺・筋緊張の評価

バイタルに問題がなければ、次に運動機能の全体像を把握します。

Fugl-Meyer Assessment(FMA)

脳卒中後の運動麻痺を定量的に評価するツールとして、国際的に広く使われているのが**Fugl-Meyer Assessment(FMA)**です。運動機能・感覚・バランス・関節可動域・疼痛の5領域から構成されており、中でも運動機能の評価が中心となります。

運動機能は**上肢(最高66点)下肢(最高34点)**に分かれており、各項目を0〜2点の3段階で採点します。

  • 0点:まったく実施できない
  • 1点:部分的に実施できる
  • 2点:正常に実施できる

上肢は肩・肘・前腕・手関節・手指の動きを33項目、下肢は股・膝・足関節の動きを17項目評価します。合計点が高いほど運動機能が保たれていることを示します。

FMAの大きなメリットは、数値として経過を追える点です。初回評価・退院時・フォローアップ時の点数を比較することで、回復の変化を客観的に示すことができます。先ほど紹介したBallester et al.(2019)の研究でも、FMAの上肢スコア(UE-FM)が主要な評価指標として使われており、国際的な臨床研究との比較という観点でも有用なツールです。

筋緊張の評価

麻痺の程度とあわせて確認したいのが筋緊張です。脳卒中後の急性期〜亜急性期は弛緩性(ふにゃふにゃした状態)であることが多く、時間の経過とともに痙縮(けいしゅく:筋肉が硬く張った状態)が出現してきます。

筋緊張の評価には**Modified Ashworth Scale(MAS)**がよく使われます。0〜4の5段階で評価し、数字が大きいほど筋緊張が高いことを示します。肘の屈筋群・手関節屈筋群・足関節底屈筋群などを中心にチェックしましょう。

感覚の確認

運動麻痺の評価と並行して、感覚障害の有無も確認します。表在感覚(触覚・痛覚)と深部感覚(位置覚・振動覚)をそれぞれ評価します。感覚障害は運動回復の予後にも影響するため、初回から把握しておくことが重要です。


STEP 3|動ける状態かを確認する——ADL・動作能力の評価

運動機能の全体像をつかんだら、次は実際の動作能力を評価します。

基本動作の確認

基本動作は「寝返り→起き上がり→座位保持→立ち上がり→立位保持→歩行」の順で確認するのが原則です。麻痺の程度によっては途中で安全上の判断が必要になります。無理に次のステップに進まず、「できること・できないこと」を丁寧に確認しましょう。

座位保持の安定性は特に重要です。座位が不安定な患者さんに立位・歩行の評価をするのは危険です。座位で体幹のバランスがどの程度保てるかを確認してから次のステップに進む習慣をつけましょう。

ADL評価スケールの活用

動作能力の全体を数値化するために、**FIM(機能的自立度評価表)Barthel Index(BI)**が使われます。FIMは運動13項目+認知5項目の合計18項目、BIは10項目で構成され、日常生活の自立度を点数化します。

初回評価でこれらのスケールを確認しておくことで、退院時や経過観察時との比較が可能になります。改善の「見える化」は、患者さんのモチベーション維持にも役立ちます。


STEP 4|機能障害を体系的に整理する——SIAS

最後に紹介するのが、**SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価セット)**です。

SIASとは

SIASは日本で開発された脳卒中専用の機能評価ツールで、運動・筋緊張・感覚・関節可動域・疼痛・体幹機能・高次脳機能・言語・嚥下など、脳卒中後に生じうる多様な障害を体系的に評価できるのが特徴です。22項目で構成されており、主に回復期リハビリ病棟で広く使われています。

主な評価項目

SIASの主な評価領域は以下のとおりです。

運動機能:上肢・下肢の近位・遠位それぞれの筋力と動きを0〜5点で評価します。BRSと組み合わせることで、麻痺の状態をより詳細に把握できます。

筋緊張:麻痺側の膝屈筋・足底屈筋の筋緊張を評価します。

感覚:表在感覚と深部感覚をそれぞれ評価します。

関節可動域・疼痛:肩関節の可動域と疼痛を確認します。肩の痛みは脳卒中患者さんに多く、リハビリの阻害因子になりやすいため要注意です。

体幹機能:腹筋力と垂直性認知(自分の体の傾きを正確に認識できるか)を確認します。

高次脳機能:視空間認知(非麻痺側への視覚的な注意)と言語機能をスクリーニング的に評価します。

口腔・嚥下機能:嚥下に関わる機能を確認します。誤嚥リスクがある場合は食事形態の調整が必要なため、早期把握が重要です。

SIASを使うメリット

SIASの最大のメリットは、多職種で共通のツールを使って情報を共有できる点です。医師・看護師・OT・ST・SWなど、それぞれの専門家が同じ評価指標を持つことで、カンファレンスや退院支援の議論がスムーズになります。

新人のうちは「SIASの点数をつけること」に意識が向きがちですが、大切なのはその数値の背景にある患者さんの状態を理解することです。点数をつけながら「なぜこの点数なのか」「どこに問題があるのか」を考える習慣が、評価力を伸ばすカギになります。


まとめ——初回評価の流れを整理しよう

今回解説した初回評価のステップをまとめます。

ステップ内容
STEP 0カルテ・情報収集(発症様式・画像所見・生活背景)
STEP 1意識・バイタルの確認(安全確認)
STEP 2運動麻痺・筋緊張・感覚の評価(FMA・MAS)
STEP 3ADL・基本動作の確認(FIM・Barthel Index)
STEP 4SIASによる体系的な機能評価

初回評価は「完璧にやらなければ」と思う必要はありません。患者さんの体調やその日の状態によって、評価できる項目には限界があります。大切なのは安全を最優先にしながら、その日に得られる情報を丁寧に集めることです。

わからないことがあれば先輩や医師に相談しながら進めることも、新人のうちは大切な評価の一部です。焦らず、一歩ずつ積み上げていきましょう。

次回は、初回評価で得た情報をもとにしたリハビリ目標の立て方についても書いていく予定です。ぜひまた読みにきてください。


北陸の総合病院勤務・臨床13年目・脳卒中認定理学療法士 ほーりー

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