この記事でわかること

  • 長下肢装具(KAFO)の基本構造と種類
  • 短下肢装具(AFO)との違い
  • KAFOの主な適応と選択基準
  • PTが知っておくべき装着・歩行訓練のポイント

はじめに

短下肢装具(AFO:Ankle-Foot Orthosis)が足関節・足部のみを支持するのに対し、
KAFOは大腿部(太もも)まで延長されており、膝関節の伸展保持や側方安定性の確保が
可能な点が大きな特徴です。

KAFOが必要になる主な状況

脳卒中後の片麻痺患者さんでは、筋力低下(特に大腿四頭筋の筋力低下)や痙縮
(筋肉が過度に緊張してしまう状態)により、膝折れが起こりやすくなります。
AFOだけでは膝の安定性を確保できない場合に、KAFOの処方が検討されます。

2. KAFOの基本構造

KAFOは以下の主要パーツで構成されています。各パーツの役割を理解しておくことで、
処方時の評価や患者説明がスムーズになります。

パーツ名役割・特徴
大腿部支柱(たいたいぶしちゅう)大腿部(太もも)に沿う金属やプラスチック製の支柱。膝より上まで延長されることで膝関節の制御を可能にする
膝継手(ひざつぎて)膝関節に対応する継手(関節部品)。固定・遊動・角度制限など様々な機能を選択できる
下腿部支柱(かたいぶしちゅう)膝から足関節までの支柱。AFO部分に相当する
足継手(あしつぎて)足関節の動きを制御する継手。底屈制限・背屈補助などの機能を選択可能
足部(そくぶ)足底を包む部分。インソール(中敷き)との組み合わせで足部アライメントを整える
大腿カフ・下腿カフ大腿部・下腿部を固定するバンド。フィット感と安定性を確保する

3. KAFOの種類

① 金属支柱型KAFO(従来型)

金属(アルミ合金やステンレス)の支柱を用いた従来からの装具です。耐久性が高く、
修理・調整がしやすいメリットがあります。一方で重量が比較的重く、
見た目(整容性)の面では現代的な素材に劣る場合があります。

  • メリット:耐久性が高い、調整しやすい、コストが比較的低い
  • デメリット:重量がある、整容性がやや劣る

② プラスチック型KAFO(モジュール型)

熱可塑性プラスチックを用いて作製されるKAFOです。軽量で整容性に優れ、
患者さんの足形に合わせた製作が可能です。脳卒中患者さんの筋緊張の変化や
浮腫(むくみ)に応じて、調整や作り直しが必要になることがあります。

  • メリット:軽量、整容性が高い、患者の足形に合わせて製作可能
  • デメリット:筋緊張や浮腫の変化への対応に手間がかかることがある

③ 膝継手の種類による分類

KAFOは膝継手の機能によっても分類されます。

膝継手の種類特徴と適応
固定型(ロック付き)膝を伸展位(まっすぐ)に固定。膝折れのリスクが高い急性期〜回復期早期に使用されることが多い
遊動型膝の屈伸運動を許容。歩行機能が改善してきた段階で検討される
多軸型膝の複雑な動きに対応した継手。活動性の高い患者に用いられる
スタンス制御型(SCKAFO)立脚相のみ膝を安定させ、遊脚相は屈曲を許可する機能的継手。歩行効率が高い

4. KAFOの適応の考え方

脳卒中後片麻痺患者さんへのKAFO処方を検討する際には、以下の点を評価・考慮します。
装具の処方は医師が行いますが、理学療法士として適切な情報提供ができることが重要です。

KAFOの主な適応

  • 大腿四頭筋(膝を伸ばす主要な筋肉)の筋力低下が著明で、AFOのみでは膝折れを防げない場合
  • ブルンストロームステージ(Brunnstrom Recovery Stage)でstage Ⅱ〜Ⅲ程度の回復初期
  • 立位・歩行訓練を安全に開始したいが、膝の安定性が確保できない場合
  • 痙縮が強く、膝関節の制御が困難な場合(ボツリヌス治療との組み合わせも検討)
  • 立位保持・荷重練習を通じて、下肢の廃用(使わないことによる機能低下)を防ぎたい場合

KAFOが適さない場合

  • 皮膚トラブル(褥瘡・浮腫・皮膚炎など)が著明な場合
  • 関節拘縮(かんせつこうしゅく:関節が固まってしまった状態)が強く、装具が適合しない場合
  • 認知機能の低下が著明で、装具の装着管理が難しい場合
  • 骨粗鬆症が高度で、装具による圧迫骨折リスクが懸念される場合
【ポイント】KAFOの適応は患者さんの状態によって変わります。
適応・非適応の判断は主治医・リハビリ担当医・義肢装具士との多職種連携で行いましょう。
また、装具の適応は「今の状態」だけでなく「目標とする状態・退院先」も考慮して検討します。

5. AFO(短下肢装具)との違いと使い分け

脳卒中リハビリでは、AFOとKAFOのどちらを選択するかが重要な判断ポイントです。
以下の比較表を参考にしてください。

比較項目AFO(短下肢装具)KAFO(長下肢装具)
支持範囲足関節〜足部膝関節〜足関節〜足部
膝の安定性確保できない確保できる
主な適応膝折れがない、大腿四頭筋がある程度機能している場合大腿四頭筋筋力低下、膝折れリスクが高い場合
装具の重量比較的軽いKAFOの方が重い
歩行の自由度高めやや制限あり(継手種類による)
導入タイミング回復期〜維持期で多く使用急性期〜回復期早期、または長期使用

一般的に脳卒中リハビリでは、回復の経過に合わせて
「KAFO(急性期・回復期)→ AFOへの変更(機能回復に伴い)」
という流れを辿ることがあります。ただし、これはあくまで一例であり、
患者さんごとに最適なアプローチを検討することが重要です。

6. 臨床でのチェックポイント【新人PTの方へ】

KAFOを使った立位・歩行訓練のポイント

① 装着確認

  • カフのフィット感・皮膚の圧迫はないか確認する
  • 膝継手のロックがかかっているか(固定型の場合)を確認する
  • 足継手の角度設定が指示通りか確認する

② 立位訓練の注意点

  • 初回立位は必ず2人介助または平行棒内で実施する
  • 患者さんの表情・バイタルサイン(血圧・SpO2)に注意を払う
  • KAFO装着中は膝継手のロックにより段差・転倒のリスクがある点に留意する

③ 歩行訓練の進め方

  • 平行棒内歩行 → 歩行器歩行 → T字杖歩行 の段階的アプローチが基本
  • 歩行中の膝折れ・バランス崩れに備え、常に介助できる位置取りをする
  • 義肢装具士との連携のもと、継手の種類や足継手角度の調整を適宜行う

装具適合評価で確認すること

理学療法士として、義肢装具士が作製したKAFOを装着した際の適合を評価する場面があります。
以下の点を確認しましょう。

  • 大腿部・下腿部カフの位置が適切か(骨突出部への圧迫はないか)
  • 足部の底面が床面に均等に接地しているか
  • 立位時に膝継手が適切に機能しているか
  • 装着・脱着が患者さん(または介助者)で実施できるか
【新人PTへのアドバイス】装具のことで不明点があれば、義肢装具士に積極的に聞きましょう。
義肢装具士は装具の専門家です。「こういう歩き方の問題がある」「この部分が当たって痛い」といった臨床での観察を伝えることで、より良い装具調整につながります。
多職種連携は患者さんの回復を支える大切な土台です。

ほーりーの臨床メモ

KAFOは急性期〜回復期早期に頻繁に使う装具で、適切なフィッティングが患者さんの意欲にも影響します。膝継手のロックを外すタイミングの判断は、筋力・バランス・恐怖感などをバランスよく見て決める必要があります。

「まだKAFOでないとダメ」と思っていた患者さんが、試しにAFOにしてみたら思いの外歩けたという経験があります。装具の変更は「できる」という成功体験を与えるタイミングでもあり、段階的な移行を患者さんと一緒に計画することが大切だと感じます。

早期離床のためのKAFO使用はセラピストの介助量を増やすが、患者さんの「立てた」という体験は回復への動機につながる貴重なものです。装具を選ぶのは機能的判断だけでなく、患者さんの心理状態も考慮した意思決定だと思っています。まずは備品用KAFOがあれば評価してみるのもいいと思います。


まとめ

本記事のポイントを整理します。

  • KAFOは膝・足関節・足部を支持する長下肢装具であり、主に大腿四頭筋の筋力低下や膝折れリスクがある場合に処方される
  • 膝継手の種類(固定型・遊動型・スタンス制御型など)によって機能が異なり、患者さんの状態に合わせて選択される
  • AFO(短下肢装具)との使い分けは、「膝関節の安定性が必要か」が一つのポイント
  • 臨床では義肢装具士との連携を大切にし、装着確認・安全管理を徹底することが重要
  • 装具は患者さんの回復段階に応じて変更・調整されるため、定期的な再評価が大切

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免責事項

本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。症状や治療方針については、必ず担当の医師・理学療法士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。

参考文献

  1. Tyson SF, et al. The effect of physical rehabilitation on balance after stroke: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2009.
  2. Buurke JH, et al. The effect of walking aids on muscle activation patterns during walking in stroke patients. Gait Posture. 2005.
  3. 日本リハビリテーション医学会監修. リハビリテーション医学・医療コアテキスト. 医学書院, 2018.
  4. 川村義肢株式会社. 装具の基礎知識(義肢装具士向け資料). 2020.
  5. 藤田みさお, ほか. 長下肢装具を用いた脳卒中急性期歩行訓練の効果. 理学療法学. 2019.

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ほーりー
脳卒中認定理学療法士・臨床13年目。総合病院勤務(回復期・地域包括・緩和ケア病棟)。姿勢・動作分析、装具療法、患者指導を専門とし、新人PT・若手PTと患者家族に脳卒中リハビリをわかりやすく発信しています。