この記事でわかること

  • まず知っておきたい:国内で使われているAFOの実態
  • AFOの種類と特徴
  • 選び方のポイント:3つのロッカー機能で考える
  • 臨床でよくある迷いどころ

はじめに

「先生、この患者さんにどのAFOを選べばいいですか?」

新人のころ、こんなことを聞けずに悩んだ経験、ありませんか?短下肢装具(Ankle Foot Orthosis:以下AFO)は脳卒中片麻痺の患者さんに使う機会がとても多い装具ですが、種類が50種類以上もあって(平山ら、2020)、「どれが何のためにあるのか」整理できないまま臨床に立っているセラピストも多いと思います。

でも、安心してください。実は臨床でよく使われるものは限られています。まずその「頻出装具」を押さえて、選び方の考え方を身につけるだけで、日々の迷いはずいぶん減るはずです。この記事では、文献をもとに短下肢装具の種類・適応・選び方のポイントを整理していきます。


まず知っておきたい:国内で使われているAFOの実態

全国109病院を対象にした大規模調査(平山ら、2020)によると、脳卒中発症後に初回処方されるAFOのトップ5は以下の通りです。

順位装具名割合
1位シューホーン型AFO約31%
2位両側金属支柱付きAFO(調節式足継手付き)約22%
3位オルトップAFO約15%
4位タマラック・ジレット継手付きAFO約11%
5位ゲイトソリューション約7%

この上位5種類だけで全体の**約86%**を占めています。1病院あたりの平均処方種類数は4.7種類。つまり、まずこの5種類の特徴と適応を押さえれば、臨床のほとんどの場面で対応できるということです。焦らず、まずはここから始めましょう。


AFOの種類と特徴

① シューホーン型AFO(プラスチック一体型)

足関節の動きをほぼ固定するタイプです。発症早期の筋力低下が強い時期に向いており、膝折れが起こりにくいという特徴があります(渡邉、2019)。

素材の硬さ(リジッドかセミリジッドか)と初期背屈角度の設定が重要で、背屈0〜5°程度に設定されることが多いです。足関節を固定することで立脚期の安定を確保できますが、一方で単脚支持期に下腿が前傾しにくく、膝関節が伸展傾向になりやすいというデメリットもあります(昆、2019)。

継手がないため調節の自由度は低いですが、シンプルで壊れにくく、在宅の維持期患者にも現実的な選択肢のひとつです。

② 両側金属支柱付きAFO(調節式足継手付き)

継手の角度調整が可能なため、病態の変化に応じて柔軟に対応できる装具です。回復期リハビリテーションの場面で特に重宝します。クレンザック継手などの調節機構によって、底屈・背屈方向の可動域や制動力を個別に調整できます。

また、長下肢装具(KAFO)からAFOにカットダウンした際の構成部分としても7割以上を占めており(平山ら、2020)、急性期から回復期にかけて最も汎用性が高い装具のひとつです。

③ オルトップAFO

シューホーン型に似たプラスチック一体型ですが、やや可撓性が高く設定されています。足関節の底背屈運動をある程度許しながら支持するため、立脚中期に下腿が前傾しやすく、アンクルロッカー機能を妨げにくい設計です(渡邉、2019)。歩行が安定してきた段階で、よりダイナミックな動きを引き出したいときに選択肢に挙がります。

④ タマラック・ジレット継手付きAFO

背屈方向を遊動とした継手を持つAFOです。立脚中期(アンクルロッカー相)での下腿前傾を妨げず、背屈方向の動きに対して装具が邪魔しないようになっています(昆、2019)。近年はこのように「アンクルロッカー機能を妨げない」設計思想の継手付きAFOが増えており、タマラック・ジレット継手はその代表格です。

⑤ ゲイトソリューション(GSD)

油圧機構を使った底屈制動機能を持つ継手付きAFOです。底屈方向に遠心性のブレーキをかけることで、踵接地を促し、荷重応答期の滑らかな下腿前傾を引き出します。底屈制動力(油圧の強さ)と初期角度をそれぞれ個別に調整できるため、症例に合わせた細かいチューニングが可能です(田中、2022)。


選び方のポイント:3つのロッカー機能で考える

AFOを選ぶときに「どのロッカー機能に働きかけたいか」という視点を持つと、整理がしやすくなります。正常歩行ではヒールロッカー・アンクルロッカー・フォアフットロッカーの3つのロッカー機能が円滑に働くことで滑らかな推進が生まれますが、脳卒中患者ではこれらが破綻します(昆、2019)。

ヒールロッカーを補いたいとき

踵接地が得られない場合に必要になります。底屈筋の過緊張や前脛骨筋の筋力低下によって遊脚末期に足が下垂し、つま先接地になってしまう場合がこれにあたります。底屈制動または底屈制限の機能を持つAFOが有効で、ゲイトソリューションや、固めのシューホーン型AFO、両側金属支柱付きAFOのロッド固定などが選択肢になります。

アンクルロッカーを確保したいとき

立脚中期に下腿が滑らかに前傾するためには、背屈方向をある程度遊動にしておくことが重要です。足関節を固定しすぎると下腿前傾の妨げになり、膝が伸展傾向になってしまいます(昆、2019)。タマラック・ジレット継手付きAFOやゲイトソリューション、オルトップAFOなどが選ばれます。

遊脚期のトウクリアランスを確保したいとき

遊脚期に足が下垂しないよう、底屈制動または底屈制限の機能が必要です。さらにトウスプリング(つま先を上げる設計)を加えることで対応する場合もあります(田中、2022)。


臨床でよくある迷いどころ

「踵接地はするのに、膝が過伸展してしまう」

荷重応答期に一度下腿が前傾したあと、単脚支持期で下腿が後傾し膝が過伸展する「snapping」と呼ばれる歩容があります(田中、2022)。新人のころに「なぜ装具を使っているのに膝が伸びすぎるんだろう?」と不思議に思った方も多いのではないでしょうか。

原因は主に、①装具の底屈制動力が強すぎること(接地後に急激な下腿前傾が強要され、その反動で膝過伸展が起こる)、②下腿三頭筋やハムストリングスの過活動、などが考えられます。

対応としては、底屈制動力を少し弱める、底屈制限から底屈制動の装具に変更する、初期背屈角度を小さくする、などが有効です。

「底屈制動力の調整と初期角度の調整、どちらを先に行うべき?」

先行研究(田中、2022)によると、底屈制動力の調整は主に踵接地から荷重応答期という限定されたタイミングに影響します。一方、初期角度の調整は歩行1周期全体の足関節・膝関節の動きに影響します。

つまり、まず底屈制動力を調整して踵接地が改善するか確認し、その後の荷重応答期の膝・足関節の動きを評価するのが合理的なステップです。初期角度の調整は、制動力調整後に必要であれば行うという順番で考えると整理しやすくなります。

「どの装具から試せばいい?」

渡邉(2019)のフローチャートは非常に参考になります。発症早期はまず「ほぼ足関節固定の常備AFO」を装着して平行棒内歩行が可能かどうかを試してみることからスタートします。そこからの反応を見ながら、次のステップ(可動域の付与、継手の変更、膝装具の追加など)を考えていくのが、経験が浅いうちでも取り組みやすいアプローチです。


装具選定で忘れてはいけない視点

AFOはバイオメカニクスだけで選ぶものではありません。実際の処方では、以下も含めた総合的な判断が必要です(田中、2022;昆、2019)。

  • 身体機能の評価:下肢の筋緊張・足関節可動域・ブルンストロームステージ。特に底屈制動の効果が骨盤まで波及するためにはBRS4以上の分離運動が重要という報告もあります(櫻井ら)。
  • 病期の確認:回復期では調整機能付きの装具が有効。維持期の在宅患者では耐久性を優先することも重要です。
  • 使用目的の明確化:歩行訓練用か生活用か、機能的歩行を目指すのか移乗動作の自立を目指すのかによって選択が変わります。

ほーりーの臨床メモ

装具療法は、私が力を入れてきた領域のひとつです。新人のころは「AFOを処方する」ことに対して後戻りはできない、失敗できないとかなりプレッシャーに感じていました。装具を使用することで「いかに機能を引き出しながら安全に歩けるか」を突き詰めるのが装具療法では大事だと感じています。

特に印象に残っているのは、硬性AFOで歩行が安定していた患者さんに、回復に合わせて段階的に軟性AFOへ移行したときのことです。「装具が変わって怖い」とおっしゃっていた方が、数週間後に「この方が自分で歩いている感じがする」と話してくれた瞬間は、装具選定の大切さを改めて実感した経験でした。

義肢装具士・医師・看護師と連携しながら装具を選ぶプロセスは、チーム医療の醍醐味でもあります。PTとして「歩行の質」と「患者さんの主観的な感覚」の両方を評価に持ち込むことで、装具を用いた歩行練習の質が上がると感じています。


まとめ

短下肢装具は種類が多く最初は圧倒されますが、「国内で上位5種類が全体の約86%を占める」という事実を知るだけで、少し気持ちが楽になりませんか?

選定のカギは「どのロッカー機能に働きかけたいか」と「今の病態に何が必要か」という視点です。底屈制動力と初期角度の調整は順番に行うことで評価しやすくなり、装具の効果を丁寧に引き出すことができます。

最初から完璧に判断しようとしなくて大丈夫です。先輩や義肢装具士さんと相談しながら、症例ひとりひとりの歩容をよく観察して、少しずつ経験を積んでいきましょう。装具選定に迷ったとき、この記事が少しでも手助けになれば嬉しいです。

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免責事項

本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。症状や治療方針については、必ず担当の医師・理学療法士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。

参考文献

  • 田中惣治「下肢装具のバイオメカニクス」日本義肢装具学会誌 Vol.38 No.3(2022)
  • 櫻井愛子・山本澄子「装具底屈制動モーメントによる片麻痺歩行の変化」バイオメカニズム 19
  • 昆恵介「下肢装具の開発と研究」リハビリテーション医学 Vol.56 No.4(2019)
  • 渡邉英夫「脳血管障害による片麻痺への下肢装具による実用的アプローチ」リハビリテーション医学 Vol.56 No.4(2019)
  • 平山史朗ら「脳卒中発症後、初回に処方される短下肢装具の2017年全国アンケート調査」日本義肢装具学会誌 Vol.36 No.1(2020)
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ほーりー
脳卒中認定理学療法士・臨床13年目。総合病院勤務(回復期・地域包括・緩和ケア病棟)。姿勢・動作分析、装具療法、患者指導を専門とし、新人PT・若手PTと患者家族に脳卒中リハビリをわかりやすく発信しています。