AFO足継手の固定・制限・制動・遊動はどう違う?新人PTが迷わない選び方ガイド

はじめに
「先生、この患者さんの装具って足継手ありにしますか?なしにしますか?」
装具処方の場面でこう聞かれて、即答できる新人PTはそう多くありません。足継手の選択は装具の機能を大きく左右しますが、学校ではあまり詳しく教わらない部分でもあります。
この記事では、脳卒中後の片麻痺患者さんの短下肢装具(AFO)を前提に、足継手の種類と選び方をわかりやすく整理します。
1. 足継手とは?
足継手(あしつぎて)とは、短下肢装具(AFO)において足部と下腿部をつなぐ関節機構のことです。この継手の種類によって、歩行中の足関節の動き方が大きく変わります。足継手がない装具(プラスチック一体型)は足関節をほぼ固定した状態になりますが、足継手を組み込むことで底屈・背屈の動きを一定の範囲でコントロールすることができます。
2. 継手なし(プラスチック一体型AFO)の特徴
まず比較の基準として、継手なしのプラスチック一体型AFO(シューホーン型・オルソレン型など)の特徴を整理します。
メリット
- 軽量・コンパクトで靴に収まりやすい
- 内反尖足の制御に優れる
- 耐久性が高く、メンテナンスが少ない
- 価格が比較的安い
デメリット
- 足関節の底背屈運動が制限されるため、歩行の自然さが損なわれることがある
- 足関節の動きを利用した推進力(プッシュオフ)が使いにくい
3. 主な足継手の種類
① 固定継手(Solid Ankle)/制限継手
固定継手は「制限継手」とも呼ばれます。足関節の底背屈を完全に制限する継手です。プラスチック一体型に近い機能を持ちながら、金属支柱(アルミ・ステンレス)を用いる場合が多く、耐久性・調整性に優れます。
適した患者さん:底屈拘縮がある方・立脚期の膝の不安定性(膝折れ)が強い方・足関節の随意性がほとんどない重症例
② 遊動継手(Free Ankle / Klenzak型など)
底屈・背屈ともに一定範囲の動きを許容する継手です。歩行周期に合わせて足関節が自然に動けるよう設計されています。Klenzak(クレンザック)継手が代表的です。
メリット:歩行の自然さを一定程度保てる・立脚期から蹴り出しにかけての運動が滑らかになる。デメリット:随意性が低い患者さんでは内反や不安定性が出やすい・定期的なメンテナンスが必要。
適した患者さん:足関節にある程度の随意的な動きがある方(BRS下肢Ⅳ以上が目安)・歩行スピードの改善を目指したい回復期の方
③ 制動継手(バネ付き継手/油圧式足継手など)
底屈方向への動きを制限しながら、背屈方向へのバネ機能を持つ継手です。遊脚期の下垂足(つま先が上がらない状態)を防ぎ、立脚初期の底屈を緩やかに制御して衝撃を吸収します。
適した患者さん:下垂足が主な問題で内反が軽度な方・足関節に若干の随意性はあるが遊脚期の背屈が不十分な方
4. 足継手選択の考え方
実際の臨床では以下のような視点で継手を選択します。
- 随意性がほぼない(BRS下肢Ⅱ〜Ⅲ):固定継手または継手なし(プラスチック一体型)
- 中程度の随意性・内反・尖足が強い(BRS下肢Ⅳ):制動継手(底屈制限メイン)
- 中程度の随意性・内反が軽度(BRS下肢Ⅳ):遊動継手または制動継手
- BRS下肢Ⅴ〜Ⅵ:カットダウン・装具なしへの移行を検討
5. 回復経過に応じた継手の見直し
急性期〜回復期初期は内反尖足が強く随意性が低い段階のため、固定継手または継手なしで立脚期の安定性を確保することが優先されます。
回復期中期〜後期に麻痺の回復が進み随意性が出てきた段階では、遊動継手や制動継手への変更を検討します。足関節の動きを利用した歩行トレーニングが可能になり、歩行速度や効率の改善が期待できます。
6. PTとして意識したいこと
足継手の選択はあくまで医師と義肢装具士が最終判断を行いますが、PTが以下の情報を正確に伝えることで、より適切な選択につながります。
- 足関節の随意性(運動麻痺の程度・背屈筋の随意収縮の有無)
- 痙縮・内反の程度(MASスコアなど)
- 足関節の関節可動域(底屈拘縮の有無・角度)
- 歩行中の問題(下垂足・膝折れ・体幹の傾きなど)
- 患者さんの活動レベル・生活環境・使用目的
ほーりーの臨床メモ
足継手の選択は「遊動・固定・制動」の3種類を基本に、患者さんの筋力・痙縮・活動レベルなどで判断しています。「とりあえず遊動タイプから」という選び方では、患者さんに合わないことが多いです。
痙縮が強い患者さんに遊動継手を使うと、底屈の力に負けて足関節が安定しないケースをしばしば経験します。この場合は底屈制動継手の方が適している可能性があり、「継手の選択=症状への対応」であることを実感する場面です。
装具の変更を提案するときは、患者さんに「なぜ変えるのか」を丁寧に説明することが大切です。慣れた装具からの変更に抵抗感を示す患者さんは多く、「試してみましょう」という段階的なアプローチが信頼関係を保ちながら進められるといいですね。
まとめ
AFO足継手は患者さんの歩行を左右する重要な要素。本記事の要点を整理します。
- 足継手の4タイプ:固定・制限・制動・遊動。それぞれの「動き方」を理解する
- 継手なし(一体型):軽量だが調整不可。回復初期や軽症例向き
- 選択の軸:①麻痺側の支持性 ②痙縮の程度 ③歩行能力 ④活動量
- 回復に応じた見直し:固定→制限→制動→遊動の順に「自由度」を増やしていく
- PTの役割:義肢装具士との連携で「機能と日常生活」両面から最適化
「とりあえずプラスチックAFO」で止まらず、患者さんの回復段階に合わせて継手を選び直す視点が、PTとしてのレベルアップに繋がります。
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よくある質問(FAQ)
Q1:継手付きと継手なし、どちらが優れていますか?
結論:「優劣」ではなく「目的次第」です。
軽量で安価な一体型AFOは初期や軽症例に有効。継手付きは「足関節背屈の許容範囲を細かく調整したい」「回復に応じて段階的に自由度を上げたい」場合に強みがあります。患者さんの回復段階・活動量・経済的負担も含めて判断します。
Q2:固定と制動の違いがイメージしづらいです。どう説明すれば良いですか?
結論:「固定=ピン留め、制動=ブレーキ」とイメージするとわかりやすいです。
固定は足関節がほぼ動かない状態(ピン留め)。制動はバネやゴムでブレーキをかけながら動きを許容する状態(車のブレーキ)。患者さんへの説明では「車の運転」に例えると伝わりやすいです。
Q3:足継手はいつ変更を検討すべきですか?
結論:「3つの指標」が改善した時です。①下肢支持性 ②歩行速度 ③装具の不適合感。
BRS・FMA・10mWTなどの評価指標で「変化」を捉え、装具更新のタイミングを判断。患者さんが「装具が邪魔に感じる」「もっと自由に動きたい」と訴える時は、自由度を上げる良いタイミングです。
Q4:義肢装具士と意見が分かれる時、どう対応しますか?
結論:「機能評価」と「日常生活」の両方の視点を共有することが鍵です。
PTは動作分析・機能評価の専門家、義肢装具士は装具設計の専門家。お互いの視点を尊重しながら「患者さんの最適解」を一緒に探る姿勢が大切です。患者さんの希望や生活環境も含めて、3者でカンファレンスする場面も有効です。
免責事項
本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。装具の選択・処方については、担当の医師・義肢装具士・理学療法士など専門家に必ずご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。
参考文献
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