この記事でわかること

  • 足継手(あしつぎて)とは何か、なぜ重要なのか
  • 足継手が担う「5つの制御」(固定・遊動・制限・制動・補助)の違い
  • なぜ「この継手=この制御」と覚えてはいけないのか
  • 底屈側・背屈側の抵抗が、歩行のどの相に効くのか
  • どのような患者さんにどの足継手が向いているか
  • 継手なし(プラスチック一体型)との使い分け

はじめに

「先生、この患者さんの装具って足継手ありにしますか?なしにしますか?」

装具処方の場面でこう聞かれて、即答できる新人PTはそう多くありません。足継手の選択は装具の機能を大きく左右しますが、学校ではあまり詳しく教わらない部分でもあります。

この記事では、脳卒中後の片麻痺患者さんの短下肢装具(AFO)を前提に、足継手の種類と選び方をわかりやすく整理します。

1. 足継手とは?

足継手(あしつぎて)とは、短下肢装具(AFO)において足部と下腿部をつなぐ関節機構のことです。この継手の種類によって、歩行中の足関節の動き方が大きく変わります。足継手がない装具(プラスチック一体型)は足関節をほぼ固定した状態になりますが、足継手を組み込むことで底屈・背屈の動きを一定の範囲でコントロールすることができます。

2. 継手なし(プラスチック一体型AFO)の特徴

まず比較の基準として、継手なしのプラスチック一体型AFO(シューホーン型・オルソレン型など)の特徴を整理します。

メリット

  • 軽量・コンパクトで靴に収まりやすい
  • 内反尖足の制御に優れる
  • 耐久性が高く、メンテナンスが少ない
  • 価格が比較的安い

デメリット

  • 足関節の底背屈運動が制限されるため、歩行の自然さが損なわれることがある
  • 足関節の動きを利用した推進力(プッシュオフ)が使いにくい

3. 足継手が担う「5つの制御」

足継手を選ぶということは、足関節の動きに「どの制御をかけるか」を選ぶということです。
制御の種類は、固定・遊動・制限・制動・補助の5つの言葉で整理できます。この5つは、義肢装具士や医師と話すときの共通言語になります。

まずはこの5つを押さえてください。継手の製品名を覚えるより、こちらのほうが確実に臨床で使えます。

制御足関節の動き臨床でのねらい(例)
固定動かさない随意性がほとんどない時期に、立脚期の安定を確保する
遊動自由に動く足関節の動きを妨げず、自然な歩行を促す
制限ある角度で止める底屈を止めて下垂を防ぐ/背屈を止めて下腿の倒れこみ(膝折れ)を防ぐ
制動抵抗を与えて、動きを抑える踵接地後の足底接地を緩やかにし、衝撃を吸収する
補助動きを助ける遊脚期の背屈を助けて、つま先の引っかかりを防ぐ

① 固定:動かさない

足関節を一定の角度(多くは軽度背屈位)に保ち、底屈も背屈も許さない制御です。プラスチック一体型AFOに近い機能になります。

選ぶ場面:足関節の随意性がほとんどない、内反尖足が強い、立脚期の膝の不安定性(膝折れ)が強い——といった、まず「支えること」を優先したい段階です。
注意点:足関節が動かない分、立脚後期の蹴り出しや前方への重心移動は制限されます。

② 遊動:自由に動く

底屈・背屈のどちらにも制限をかけず、足関節が自由に動く制御です。

選ぶ場面:足関節にある程度の随意性があり、動きを妨げないほうが歩行が良くなる段階。装具の段階的縮小(カットダウン)を見据えるときにも検討します。
注意点:随意性が不十分なまま遊動にすると、内反や不安定性が出やすくなります。

③ 制限:ある角度で止める

ここまでは動くが、それ以上は止まる——という制御です。ストッパーで可動範囲の端を決めるイメージで、固定とは異なり設定した範囲内では足関節が動きます

  • 底屈制限:つま先が下がりすぎるのを止める。遊脚期の引っかかりや、フットスラップの対策になる
  • 背屈制限:下腿が前に倒れこみすぎるのを止める。立脚後期の膝折れ対策として重要

ここが混同されやすいポイントです。「固定」と「制限」は別物です。固定はそもそも動かない、制限はある範囲までは動く。この違いを押さえておくと、処方の意図が読み取りやすくなります。

④ 制動:抵抗を与えて、動きを抑える

動きを止めるのではなく、ゆっくりにする制御です。油圧や樹脂のたわみなどで抵抗をかけ、急激な動きを抑えます。

選ぶ場面:踵接地から足底接地までの底屈が急で、フットスラップや衝撃が問題になっている場合。動きを残しながら勢いだけを抑えたいときに向きます。
制限との違い:制限は「その角度で止まる」、制動は「そこまでの動きが緩やかになる」。目的が似ていても、患者さんの感じ方と歩行への影響は変わります。

⑤ 補助:動きを助ける

バネなどの力で、足りない動きを積極的に助ける制御です。抑える方向ではなく、動かす方向に働きます。

選ぶ場面:もっとも多いのは背屈補助です。遊脚期に足関節を背屈方向へ引き上げ、つま先の引っかかり(下垂足)を防ぎます。
注意点:補助力が強すぎると立脚期に足底が接地しにくくなることがあり、強さの調整には義肢装具士との連携が欠かせません。

3-2. 「継手の名前」と「制御」は1対1ではない

ここが、新人のうちにいちばん誤解しやすいところです。

たとえばダブルクレンザック継手は「遊動の継手」と覚えられがちですが、正確ではありません。この継手は金具の名前であって、ロッド(ピン)やバネをどう入れるかによって、固定にも制限にも遊動にも補助にもなります

  • ロッドを入れて動きを止める → 固定・制限として働く
  • 何も入れない → 遊動として働く
  • バネを入れる → 補助(背屈補助)として働く

つまり「この継手=この制御」と丸暗記すると、現場でつまずきます
大切なのは「どの継手を使うか」ではなく、「この患者さんの、どの相の、どの動きに、どの制御をかけたいか」を言葉にできることです。

そこが整理できていれば、義肢装具士に「立脚後期に下腿が倒れこむので、背屈を少し制限したい」「遊脚期のクリアランスが足りないので、背屈を補助してほしい」と具体的に伝えられます。伝わり方がまったく変わります。

3-3. その制御は、歩行のどの相に効くのか

5つの制御を覚えても、それだけでは選べません。その制御が、歩行のどのタイミングで働くのかが分かって、はじめて患者さんの問題と結びつきます。

ここでは、足関節の抵抗を細かく設定できるタイプの継手について、近年提案された調整の考え方を手がかりに整理します。

立ちはじめに効くのは「底屈側の抵抗」

踵が床についてから、足の裏全体が接地するまでの間です(ロッカー=足を支点にして体が前へ進む仕組みのうち、最初の段階にあたります)。

ここで底屈(ていくつ:つま先が下を向く動き)を強く止めてしまうと、足の裏が床につくときに下腿が急に前へ倒れ、膝が急に曲がります

これは患者さんの麻痺のせいではなく、装具の設定が作り出した膝折れであることがあります。底屈側の抵抗を少しずつ緩めていくと、膝の曲がり方は落ち着いていきます。

立っている間から蹴り出しに効くのは「背屈側の抵抗」

足の裏が接地してから、踵が浮くまでの間です。下腿が前へ倒れていく動きを、背屈(はいくつ:つま先が上を向く動き)側の抵抗が受け止めます。

  • 抵抗を上げる:下腿が倒れすぎるのを抑え、膝が伸びすぎるのを防ぐ
  • 抵抗を下げる:下腿が前に出やすくなり、膝が曲がったままになりやすい場合に

反張膝と膝折れでは、調整の向きが逆になる

ここが、実際にいちばん迷うところです。

  • 膝折れ(膝がカクンと曲がる):底屈側の抵抗を緩める
  • 反張膝(はんちょうしつ:膝が後ろに反ってしまう):緩めるとかえって悪化することがある

反張膝がある方では、底屈側の抵抗はある程度保ったまま、背屈側で調整するという考え方が示されています。「膝が不安定」とひとくくりにできない、ということです。

継手は「つけて終わり」ではなく「合わせて働く」

抵抗を細かく設定できる継手には、抵抗の閾値(しきいち)という考え方があります。ある強さまでは動かず、その強さを超えると動き始める、という仕組みです。

これが、先ほどの「継手の名前と制御は1対1ではない」という話の中身です。同じ金具でも、設定を変えれば違う制御になります。

LeCursiらは、この調整を5つの段階・合計30分程度で進める手順を提案しています。特別な計測機器は必須ではなく、スマートフォンの高速度撮影(スローモーション)で確認することを前提にしています。

では、なぜ一人ひとり合わせる必要があるのでしょうか。

神経筋疾患で下腿三頭筋の筋力が低下した37名に、5段階の硬さの装具を試した研究があります。集団としてみると、硬さによる差は出ませんでした。ところが一人ひとりで見ると、最も効率の良い硬さと最も悪い硬さのあいだに、平均10.7%の差がありました。しかもどの硬さが最も良いかは、人によって違っていました。

※この研究の対象は脳卒中ではなく神経筋疾患です。そのまま当てはめることはできません。ただ、「誰にでも合う硬さ」がある、とは言いにくくなる結果だと思います。

最後に、注意しておきたい点を2つ挙げます。

1つは、観察による歩行分析には誤差があるということです。ある評価尺度では、背屈の判定が7〜8割の一致率だったのに対し、膝の伸展については5割を切ったという報告があります。だからこそ、記憶ではなく動画で確認する意味があります。

もう1つは、この調整手順そのものの有効性は、まだ臨床試験で検証されていないという点です。個々の調整の理屈には根拠がありますが、「この順番でやれば良くなる」ことが証明されたわけではありません。著者ら自身がそう書いています。

4. 足継手選択の考え方

実際の臨床では以下のような視点で継手を選択します。

  • 随意性がほぼない(BRS下肢Ⅱ〜Ⅲ):固定継手または継手なし(プラスチック一体型)
  • 中程度の随意性・内反・尖足が強い(BRS下肢Ⅳ):制動継手(底屈制限メイン)
  • 中程度の随意性・内反が軽度(BRS下肢Ⅳ):遊動継手または制動継手
  • BRS下肢Ⅴ〜Ⅵ:カットダウン・装具なしへの移行を検討

5. 回復経過に応じた継手の見直し

急性期〜回復期初期は内反尖足が強く随意性が低い段階のため、固定継手または継手なしで立脚期の安定性を確保することが優先されます。

回復期中期〜後期に麻痺の回復が進み随意性が出てきた段階では、遊動継手や制動継手への変更を検討します。足関節の動きを利用した歩行トレーニングが可能になり、歩行速度や効率の改善が期待できます。

6. PTとして意識したいこと

足継手の選択はあくまで医師と義肢装具士が最終判断を行いますが、PTが以下の情報を正確に伝えることで、より適切な選択につながります。

  • 足関節の随意性(運動麻痺の程度・背屈筋の随意収縮の有無)
  • 痙縮・内反の程度(MASスコアなど)
  • 足関節の関節可動域(底屈拘縮の有無・角度)
  • 歩行中の問題(下垂足・膝折れ・体幹の傾きなど)
  • 患者さんの活動レベル・生活環境・使用目的

膝の制御が必要な段階では、足継手だけでは足りません。ここまで見てきた足継手の調整は、あくまで膝が自力で支えられることが前提です。膝折れが起きている時期には、膝継手を持つKAFO(長下肢装具)で膝ごと支持し、回復に応じてAFOへカットダウンしていく流れになります。KAFOの構造・膝継手の種類・AFOとの使い分けはKAFOとは?長下肢装具の種類・選び方・AFOとの違いを完全ガイドにまとめました。

ほーりーの臨床メモ

足継手の選択は「遊動・固定・制動」の3種類を基本に、患者さんの筋力・痙縮・活動レベルなどで判断しています。「とりあえず遊動タイプから」という選び方では、患者さんに合わないことが多いです。

痙縮が強い患者さんに遊動継手を使うと、底屈の力に負けて足関節が安定しないケースをしばしば経験します。この場合は底屈制動継手の方が適している可能性があり、「継手の選択=症状への対応」であることを実感する場面です。

装具の変更を提案するときは、患者さんに「なぜ変えるのか」を丁寧に説明することが大切です。慣れた装具からの変更に抵抗感を示す患者さんは多く、「試してみましょう」という段階的なアプローチが信頼関係を保ちながら進められるといいですね。


まとめ

AFO足継手は患者さんの歩行を左右する重要な要素。本記事の要点を整理します。

  • 足継手が担う5つの制御:固定・遊動・制限・制動・補助。まずこの共通言語を押さえる
  • 「継手の名前」と「制御」は1対1ではない:ダブルクレンザックは設定次第で固定・制限・遊動・補助のいずれにもなる
  • 継手なし(一体型):軽量だが調整不可。回復初期や軽症例向き
  • 選択の軸:①麻痺側の支持性 ②痙縮の程度 ③歩行能力 ④活動量
  • 回復に応じた見直し:支える制御から、動きを許す制御へ。回復に合わせて選び直してよい
  • PTの役割:義肢装具士との連携で「機能と日常生活」両面から最適化

「とりあえずプラスチックAFO」で止まらず、患者さんの回復段階に合わせて継手を選び直す視点が、PTとしてのレベルアップに繋がります。

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よくある質問(FAQ)

Q1:継手付きと継手なし、どちらが優れていますか?

結論:「優劣」ではなく「目的次第」です。

軽量で安価な一体型AFOは初期や軽症例に有効。継手付きは「足関節背屈の許容範囲を細かく調整したい」「回復に応じて段階的に自由度を上げたい」場合に強みがあります。患者さんの回復段階・活動量・経済的負担も含めて判断します。

Q2:固定・制限・制動の違いがイメージしづらいです。どう整理すれば良いですか?

結論:「固定=ピン留め、制限=ストッパー、制動=ブレーキ」と対応させると整理できます。

固定は足関節がほぼ動かない状態(ピン留め)。制限はある角度までは動くけれど、そこで止まる状態(ドアストッパー)。制動は動きは許すけれど、抵抗をかけて緩やかにする状態(車のブレーキ)です。
とくに「固定」と「制限」は混同されやすいので注意してください。制限は設定した範囲内では動きます。ここに補助(バネで動きを助ける)を加えた5つが、足継手の制御を語るときの共通言語になります。

Q3:足継手はいつ変更を検討すべきですか?

結論:「3つの指標」が改善した時です。①下肢支持性 ②歩行速度 ③装具の不適合感。

BRS・FMA・10mWTなどの評価指標で「変化」を捉え、装具更新のタイミングを判断。患者さんが「装具が邪魔に感じる」「もっと自由に動きたい」と訴える時は、自由度を上げる良いタイミングです。

Q4:義肢装具士と意見が分かれる時、どう対応しますか?

結論:「機能評価」と「日常生活」の両方の視点を共有することが鍵です。

PTは動作分析・機能評価の専門家、義肢装具士は装具設計の専門家。お互いの視点を尊重しながら「患者さんの最適解」を一緒に探る姿勢が大切です。患者さんの希望や生活環境も含めて、3者でカンファレンスする場面も有効です。

免責事項

本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。装具の選択・処方については、担当の医師・義肢装具士・理学療法士など専門家に必ずご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。

参考文献

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  9. Waterval NFJ, et al. Modifying ankle foot orthosis stiffness in patients with calf muscle weakness: gait responses on group and individual level. J Neuroeng Rehabil. 2019;16(1):120.
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ほーりー
脳卒中認定理学療法士/臨床13年目/総合病院勤務(回復期・地域包括・緩和ケア病棟)で累計500例以上の脳卒中患者のリハビリを担当。院内では新人PT教育・勉強会講師を継続。日本神経理学療法学会所属。新人PT・若手PTと患者様・ご家族に「現場の知見」をわかりやすく発信しています。