BRSとFMAの使い分け方【片麻痺評価ツールの違いと臨床での活用法】

この記事でわかること
- BRS(ブルンストロームステージ)とは
- Fugl-Meyer Assessment(FMA)とは
- BRSとFMAの比較
- 臨床での使い分けポイント
「BRSとFMAって、どちらも麻痺の評価なのに何が違うの?どう使い分ければいいかわからない」——新人PTからよく聞かれる疑問です。
脳卒中リハビリの現場では、患者さんの回復状況を客観的に把握するために、さまざまな評価指標が使われています。その中でも特によく使われるのが、BRS(ブルンストロームステージ)とFugl-Meyer Assessment(FMA)です。
「どちらも麻痺の評価じゃないの?」と思っている新人PTの方も多いのではないでしょうか。確かに両方とも脳卒中後の運動麻痺を評価するツールですが、目的・構造・使い方には明確な違いがあります。
この記事では、BRSとFMAそれぞれの特徴を整理し、臨床での使い分けのポイントをわかりやすく解説します。
BRS(ブルンストロームステージ)とは
BRS(Brunnstrom Recovery Stage)は、スウェーデンの理学療法士シーグネ・ブルンストロームが提唱した評価法です。脳卒中後の運動麻痺の回復過程を、ステージ1〜6の6段階で表します。
評価部位は「上肢」「手指」「下肢」の3つに分かれており、それぞれ独立したステージで評価します。
各ステージの概要(上肢の例):
- ステージ1:弛緩性麻痺。随意運動なし
- ステージ2:連合反応・共同運動が出現
- ステージ3:共同運動パターンで随意運動可能
- ステージ4:一部の分離運動が可能
- ステージ5:より難しい分離運動が可能
- ステージ6:協調性・速度がほぼ正常
BRSの大きな特徴は「短時間で評価できる」こと。慣れれば5〜10分程度で完了し、臨床の忙しい現場でも使いやすいツールです。
Fugl-Meyer Assessment(FMA)とは
FMAは1975年にフューグル・マイヤーらが開発した評価ツールで、脳卒中後の機能回復を多角的・定量的に測定します。
評価領域は主に以下の5つで構成されています:
- 上肢運動機能(最大66点)
- 下肢運動機能(最大34点)
- 感覚機能(最大24点)
- バランス(最大14点)
- 関節可動域・疼痛(最大44点)
最も頻繁に使われるのは「上肢運動機能(FMA-UE)」で、66点満点の細かい点数で運動機能を評価します。各動作を0〜2点の3段階で採点するため、BRSと比べて細かい変化を捉えられるのが大きな強みです。
一方、全項目を評価すると30〜60分程度かかり、習熟にも時間を要します。
BRSとFMAの比較
| 項目 | BRS(ブルンストロームステージ) | Fugl-Meyer Assessment(FMA) |
|---|---|---|
| 評価形式 | ステージ1〜6の順序尺度 | 0〜2点の3段階×複数項目(比率尺度) |
| 評価対象 | 上肢・手・下肢の各パーツ | 上肢・下肢・感覚・バランスなど多領域 |
| 所要時間 | 5〜10分程度 | 30〜60分程度 |
| 変化の検出 | 粗い(6段階) | 細かい(66〜226点満点) |
| 主な用途 | 臨床での日常的なスクリーニング | 研究・詳細な経過評価 |
臨床での使い分けポイント
BRSを使うべき場面
BRSは「スクリーニング」や「日常的な経過観察」に向いています。患者さんのおおまかな回復段階を素早く把握したいときや、カルテへの簡潔な記録として活用しましょう。
- 急性期〜回復期の初期評価
- 毎日のリハビリ記録でのモニタリング
- チームへの情報共有(医師・看護師への端的な報告)
FMAを使うべき場面
FMAは「詳細な機能評価」や「介入効果の検証」に向いています。治療前後の変化を数値で示したいときや、研究・論文の根拠として使いたい場合に活躍します。
- 介入効果の定量的評価(訓練前後の比較)
- 症例報告や研究でのアウトカム指標
- BRSで同じステージが続いている患者さんの細かい変化を把握したいとき
両方を組み合わせる
実際の臨床では、BRSで大まかな回復段階を把握しつつ、重要なタイミング(初期評価・退院前・研究目的など)でFMAを実施するという組み合わせが効果的です。「ステージは変わっていないけれど、細かい動作が改善している」という変化を患者さんや家族に伝えるときにも、FMAの点数変化は説得力があります。
ほーりーの臨床メモ
私の場合、学校で習った運動麻痺の評価はBRSで、FMAは臨床で働き始めてから使い始めました。初めのころは2つのの違いがわからずに使い分けができませんでした。「運動麻痺を評価してください」と先輩に言われてもどちらを選ぶべきか迷っていました。
今は場面によって使い分けています。日々の変化を短時間で追うにはBRS、研究や詳細な機能評価・入退時の記録にはFMAという感覚です。FMAは項目数が多く時間がかかるため、急性期の忙しい現場では患者さんの疲労にも配慮しながら実施する必要がありますね。
また、BRSは段階が粗いため「ステージ3のまま変化なし」と記録されていても、実際は細かな改善が積み重なっていることがあります。その場合FMAで変化を捉えることで、患者さんやご家族に「ここが良くなっています」と具体的に伝えられる場面が増えました。評価ツールを「記録のため」だけでなく「変化を伝えるため」に使う視点は、リハビリのモチベーション維持にも大きく役立っています。
まとめ
BRSとFMAは、それぞれ目的と使い方が異なる補完的な評価ツールです。要点を整理すると:
- BRSは「素早く・シンプルに」回復段階を把握するためのツール
- FMAは「細かく・定量的に」機能回復を評価するためのツール
- 臨床ではBRSを日常使いし、必要な場面でFMAを活用するのが実践的
新人PTのうちは「なんとなく使っている」ことも多いかもしれませんが、評価ツールの特性を理解して使い分けることで、患者さんの変化をより正確に把握し、より質の高いリハビリにつなげることができます。
ぜひ日々の臨床の中で意識的に使い分けてみてください。
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免責事項
本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。症状や治療方針については、必ず担当の医師・理学療法士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。
参考文献
- Brunnstrom S. Movement Therapy in Hemiplegia: A Neurophysiological Approach. Harper & Row; 1970.
- Fugl-Meyer AR, et al. The post-stroke hemiplegic patient. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31.
- 脳卒中治療ガイドライン2021. 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会. 協和企画; 2021.
- 日本リハビリテーション医学会(監). リハビリテーション医学・医療コアテキスト. 医学書院; 2018.
- 中村隆一, 齋藤宏, 長崎浩. 基礎運動学 第6版補訂. 医歯薬出版; 2012.


















