「体幹機能評価、何を選べばいいかわからない…」

TCT(Trunk Control Test)、TIS-V(Verheyden版 Trunk Impairment Scale)、TIS-F(Fujiwara版 Trunk Impairment Scale)、FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)。脳卒中患者の体幹機能を評価するツールは複数ありますが、どれを選ぶべきか、スコアをどう解釈して臨床に活かすか、悩む新人PTや若手PTは多いのではないでしょうか。

この記事では、代表的な4つの体幹機能評価ツールの特徴・採点方法・使い分けを整理します。そして2026年にArchives of Physical Medicine and Rehabilitationに掲載されたTagamiらの研究(Tagami et al., 2026)をもとに、「体幹機能の4因子モデル」という新しい視点から、各評価スコアを個別化リハビリ計画にどう活かすかを解説します。

1. なぜ体幹機能評価が重要なのか

脳卒中後の患者さんでは、座位バランスと体幹コントロールの障害が最大96.4%に及ぶと報告されています(Kong & Ratha Krishnan, 2021)。体幹は脊柱を支え、静的・動的活動における重心移動の制御の中心となる部位であり、その障害は歩行・ADL(日常生活動作)・QOL全体に深刻な影響をもたらします。

具体的には、体幹機能の低下は歩行自立度の低下・退院先の変化と関連します。TIS(Trunk Impairment Scale)のスコアは、発症後4週時点および6か月時点のADL予後を予測する指標として報告されており(Kim et al., 2015)、体幹機能評価は退院時ADLや歩行自立を見通すためのリハビリ計画の根拠となります。

また、TCT(Trunk Control Test)は「Time to Walking Independently after Stroke(TWIST)アルゴリズム」の主要構成要素であり(Smith et al., 2017)、歩行自立までの日数予測に活用されています。

体幹機能評価は「今の状態の把握」にとどまらず、「今後の回復を予測し、適切なリハビリ目標を設定する」ための重要なツールなのです。

2. 代表的な4つの体幹機能評価ツール

現在、脳卒中リハビリの臨床でよく使われる体幹機能評価ツールは主に4つあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

① TCT(Trunk Control Test)

TCTは、Collin & Wade(1990)によって開発された体幹機能評価です。もともと脳卒中後の運動機能評価として開発され、現在も急性期から回復期にわたり広く使用されています。

■ 評価項目(全4項目)

  • 麻痺側への寝返り(Turning to paralyzed side)
  • 非麻痺側への寝返り(Turning to nonparalyzed side)
  • 起き上がり動作(Getting up movements)
  • 座位保持(Holding a sitting position)

■ 採点方法

各項目:0点(実施不可)・12点(代償動作あり)・25点(正常)の3段階。合計点0〜100点(高いほど良好)。

■ 臨床での特徴とポイント

評価項目が4つと少なく、ベッドサイドで短時間に実施できるのが最大のメリットです。歩行回復の予測力が高く、TWISTアルゴリズムの核心指標として機能します。急性期から回復期まで幅広く使用でき、特に「歩行自立の見通しを立てたい」場面で有用です。

一方で、評価項目が粗いため、体幹の細かな動的バランス能力や協調性は評価できません。後述する4因子モデルでは「基本動作(Factor 4)」に対応します。

② TIS-V(Trunk Impairment Scale of Verheyden)

TIS-Vは、Verheydenら(2004)によって開発された体幹機能評価スケールです。座位バランスに焦点を当てており、脳卒中領域で最も妥当性・信頼性が確立されたツールの一つです。

■ 評価項目(全17項目・3つのサブスケール)

  • 静的座位バランス(Static sitting balance):3項目 最高7点
  • 動的座位バランス(Dynamic sitting balance):10項目 最高10点
  • 協調性(Coordination):4項目 最高6点

合計:0〜23点(高いほど良好)

■ 臨床での特徴とポイント

4つの評価ツールの中で最も網羅的に座位バランスを評価できます。特に「動的座位バランス」と「協調性(体幹と上下肢の協調した動き)」を細かく評価できる点が特徴です。

後述する4因子モデルでは「動的座位バランス(Factor 1・Factor 2)」に対応する項目を最も多く含み、回復期以降の患者さんや座位での動的バランスを詳しく評価したい場面に適しています。

③ TIS-F(Trunk Impairment Scale of Fujiwara)

TIS-Fは、Fujiwaraら(2004)によって開発された体幹機能評価スケールです。TIS-Vとは異なり、臥位(仰向け)での評価項目を含み、急性期早期の患者さんに特に適しています。

■ 評価項目(全7項目)

  • 体幹垂直性の知覚(Perception of trunk verticality)
  • 麻痺側・非麻痺側の体幹回旋筋力(Trunk rotation muscle strength)
  • 麻痺側・非麻痺側の立ち直り反射(Righting reflex)
  • 脳卒中障害評価セット:垂直性・腹筋力(Stroke impairment assessment set)

得点範囲:3〜20点(高いほど良好)

■ 臨床での特徴とポイント

臥位での評価項目を含むため、座位保持が困難な急性期早期の患者さんでも実施できます。ADL予後との関連が報告されており(Kim et al., 2015)、発症直後から退院時ADLを見通したい場面で特に有用です。後述する4因子モデルでは「静的座位(Factor 3)」に対応する項目を含みます。

④ FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)

FACTは、奥田ら(Okuda et al., 2006)によって開発された体幹機能評価スケールです。10項目20点満点で構成され、治療指向的な体幹機能検査として設計されています。

■ 評価項目(全10項目)

  • 静的座位バランス(Static sitting balance):2項目
  • 動的座位バランス(Dynamic sitting balance):8項目

得点範囲:0〜20点(高いほど良好)。検査に要する時間は約5分と短く(奥田ら,2006)、臨床で使いやすいのが特徴です。

■ 臨床での特徴とポイント

脳卒中患者の歩行自立との関連が報告されており(Sato & Ogawa, 2025)、歩行訓練の見通しを立てる指標としても活用できます。後述する4因子モデルでは「静的座位(Factor 3)」および「動的座位・低難度(Factor 1)」の一部に対応します。

3. 4つの評価ツールの比較一覧

4つのツールの主な違いを以下の表にまとめます。

比較項目TCTTIS-VTIS-FFACT
項目数4項目17項目7項目10項目
得点範囲0〜100点0〜23点3〜20点0〜20点
評価姿勢臥位・座位座位臥位・座位座位
適した病期急性期〜回復期回復期(中期以降)急性期〜回復期回復期早期以降
予後予測歩行予後(TWIST)ADL・歩行予後ADL予後歩行自立
4因子モデルとの対応Factor 4(基本動作)Factor 1・2(動的座位)Factor 3(静的座位)Factor 3・1(静的・動的座位)

4. どのツールを使えばいい?場面別の選び方

「どのツールを使うべきか」は、①患者さんの病期、②何を評価・予測したいか、によって異なります。

急性期(発症から数日以内)

座位保持が困難または不安定な段階では、臥位での評価が可能なTIS-FとTCTを組み合わせるのが基本です。

  • TIS-F:急性期専用設計で臥位評価が可能。ADL予後の大まかな見通しを立てられる
  • TCT:臥位〜座位の移行動作も含む。歩行予後の早期スクリーニングに有用

回復期早期(座位が可能になった段階)

座位が安定してきたら、FACTとTCTを組み合わせてリハビリの進捗を追跡しながら、必要に応じてTIS-Vで動的バランスを細かく評価します。

  • FACT:回復期早期向け。歩行自立予測と体幹機能の変化追跡に使いやすい
  • TCT:TWISTアルゴリズムで歩行自立までの日数を予測するのに活用

動的バランス・協調性の詳細評価(回復期中期以降)

歩行訓練が進んでいる患者さんで、体幹の動的バランスや協調性を詳しく評価したい場合はTIS-Vが最適です。

  • TIS-V:17項目で座位バランスを網羅的に評価。体幹と上下肢の協調性(体幹回旋)も評価可能
  • 各サブスケール(静的・動的・協調性)を個別に分析することで、介入ポイントを特定できる

5. 体幹機能の4因子モデル(Tagamiら,2026年の最新研究)

ここからは、体幹機能評価のスコアを臨床により活かすための新しい視点を紹介します。

研究の概要

2026年、TagamiらはArchives of Physical Medicine and Rehabilitationに掲載された研究において、脳卒中早期(発症後平均1.2日)の200名の患者(脳梗塞162名・脳出血38名、平均年齢75.9歳)を対象に、TCT・TIS-V・TIS-F・FACTの4種類の評価ツール(計38項目)を同時に実施しました。

探索的因子分析(EFA)とラッシュ(Rasch)分析を組み合わせることで、これらの評価ツールの項目に共通する因子構造を明らかにしました(Tagami et al., 2026)。

4つの因子の内容

分析の結果、脳卒中後の体幹機能には4つの因子が存在することが明らかになりました。

因子名称主な対応ツールどんな動作・能力を測るか
Factor 4(最も易しい)基本動作(Basic movement)TCT麻痺側・非麻痺側の両肢を用いる寝返りや起き上がりなどの基本的な姿勢変換動作
Factor 3静的座位(Static sitting)FACT(静的) TIS-F体幹アライメントの保持・骨盤前傾の促進など、静的な座位姿勢の維持に関わる能力
Factor 1動的座位・低難度(Dynamic sitting, less challenging)TIS-V(動的・協調性) FACT(動的一部)支持基底面内での前方リーチと前方骨盤傾斜の協調など、比較的難易度が低い動的座位バランス
Factor 2(最も難しい)動的座位・高難度(Dynamic sitting, more challenging)TIS-V(高難度動的・協調性)支持基底面を超えたリーチ・体幹回旋・反応的バランスなど、高度な協調性と動的制御を要する座位バランス

体幹機能回復の階層構造

この4因子モデルの重要な点は、4つの因子が「難易度に基づく階層的な構造」を持つことです。ラッシュ分析によってこの階層性が統計的に確認されており、体幹機能の回復は以下の順序(易→難)で進む傾向があります(Tagami et al., 2026)。

基本動作(Factor 4)→ 静的座位(Factor 3)→ 動的座位・低難度(Factor 1)→ 動的座位・高難度(Factor 2)

つまり、体幹機能は「寝返りや起き上がりなどの基本的な姿勢変換」から始まり、「静的な座位保持」→「座位での動的バランス(低難度)」→「座位での高難度の動的バランスや協調性」へと段階的に回復していくことが示されています。

6. スコアの臨床的解釈と治療への活かし方

4因子モデルを踏まえると、各評価ツールのスコアを「患者さんは体幹機能回復のどの段階にいるのか」という視点で解釈できます。

評価プロファイルの読み取り方

複数の評価ツールを組み合わせることで、患者さんの「体幹機能プロファイル」を4つの因子の観点から把握できます。以下は解釈の例です。

  • TCTが低い(0〜50点程度)→ Factor 4(基本動作)が未達成。寝返り・起き上がりの介助量軽減とリハビリを優先する
  • TCTは良好だがFACTの静的座位スコアが低い → Factor 3(静的座位)が課題。座位アライメントの保持や骨盤前傾の練習を重点的に行う
  • FACTは改善しているがTIS-V動的バランスが低い → Factor 1(動的座位・低難度)が課題。支持基底面内でのリーチや重心移動の練習を追加する
  • TIS-V動的バランスは達成できているが協調性スコアが低い → Factor 2(動的座位・高難度)が課題。体幹回旋や支持基底面を超えたリーチなどの高難度練習へ進む

治療の効率化と個別化

4因子モデルの階層構造を活かすと、不要なトレーニングをスキップして効率的なリハビリ計画を立てられます。Tagamiら(2026)は、例えばFactor 3(静的座位)は達成できているがFactor 2(動的座位・高難度)が困難な患者さんの場合、Factor 1の簡単な動的バランス練習に時間をかけることなく、直接Factor 2の高難度動的バランス訓練に集中できると述べています。

このように、複数の評価ツールを「どの因子が達成されていて、どの因子が課題か」という視点で分析することで、根拠のある個別化リハビリテーション計画の立案が可能になります。

7. まとめ

脳卒中後の体幹機能評価について、押さえておくべき重要なポイントを整理します。

  • TCT:シンプルで短時間。歩行予後予測(TWISTアルゴリズム)に特に有用。急性期〜回復期で幅広く使用できる
  • TIS-V:座位バランスを網羅的に評価。動的バランスと協調性の詳細評価に優れる。回復期中期以降に特に有用
  • TIS-F:急性期専用設計で臥位での評価が可能。ADL予後の早期予測に有用
  • FACT:奥田ら(2006)開発。回復期早期向けで扱いやすい。歩行自立との関連が報告されており、リハビリの進捗追跡に適する
  • 4因子モデル(Tagami et al., 2026):体幹機能は「基本動作→静的座位→動的座位(低難度)→動的座位(高難度)」の階層構造で回復する。この視点でスコアを解釈することで、個別化されたリハビリ計画立案が可能になる

まずはTCTとFACTを急性期・回復期早期の基本セットとして使いながら、評価の目的や病期に応じてTIS-VやTIS-Fを組み合わせることから始めてみましょう。そして各スコアを4因子モデルの観点で読み解くことで、より精度の高い個別化リハビリテーションの実践につなげてください。

参考文献

  • Tagami Y, Fujii S, Inui Y, Takamura Y, Nakao S, Takase K, Tomotake A, Shinbori N, Kitahara R, Morioka S. Integrated Structural Analysis of Trunk Function Assessment After Stroke: New Evaluation Model Based on Multiscale Factor Analysis and Rasch Analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2026;000:1-10. doi:10.1016/j.apmr.2026.01.027
  • Collin C, Wade D. Assessing motor impairment after stroke: a pilot reliability study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1990;53:576-9.
  • Verheyden G, Nieuwboer A, Mertin J, et al. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004;18:326-34.
  • Fujiwara T, Liu M, Tsuji T, et al. Development of a new measure to assess trunk impairment after stroke (trunk impairment scale): its psychometric properties. Am J Phys Med Rehabil. 2004;83:681-8.
  • Okuda Y, Ogino Y, Ozawa Y, Harada S, Edure A, Uchiyama Y. Development and Reliability of Functional Assessment for Control of Trunk (FACT). Rigakuryoho Kagaku. 2006;21(4):357-362.
  • Sato K, Ogawa T. Functional assessment for control of the trunk predicts independent walking in patients with stroke. JMA J. 2025;8:226-33.
  • Smith MC, Barber PA, Stinear CM. The TWIST algorithm predicts time to walking independently after stroke. Neurorehabil Neural Repair. 2017;31:955-64.
  • Kim TJ, Seo KM, Kim DK, Kang SH. The relationship between initial trunk performances and functional prognosis in patients with stroke. Ann Rehabil Med. 2015;39:66-73.

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病院で10年以上勤務。認定理学療法士(脳卒中)取得。病院では新人や若手セラピストの教育や指導を担当しています。