低周波療法・干渉波療法とは?脳卒中リハビリでの疼痛管理と筋機能への応用

はじめに
「TENSとFESって何が違うんですか?」
「干渉波を肩の痛みに使う指示が出たんですが、どこに貼ればいいかわからなくて……」
電気刺激療法の中でも、低周波療法・干渉波療法は疼痛管理を主な目的として使われますが、「なぜこれで痛みが取れるのか」を説明できる新人PTは意外と少ないものです。この記事では低周波療法・干渉波療法のメカニズムから、脳卒中リハビリへの具体的な応用まで整理します。
TENSとは何か
TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:経皮的電気神経刺激)は、皮膚表面に電極(パッド)を貼り、末梢神経に電気刺激を加える物理療法です。
主な目的は疼痛管理であり、筋収縮を主目的とするFES・NMESとは異なります。
TENSの痛みを和らげるメカニズム
TENSが疼痛を軽減するメカニズムは、主に2つの理論で説明されます。
① ゲートコントロール理論(gate control theory)
太い有髄線維(Aβ線維)を電気で刺激すると、脊髄後角(せきずいこうかく)で「ゲート(gate)」が閉じ、痛みを伝える細い線維(C線維・Aδ線維)の信号が脊髄より上位に伝わりにくくなるとされます。
この作用が期待されるのは高頻度TENS(80〜150Hz)で、電極貼付直後から疼痛軽減が始まり、刺激中は効果が持続します(ただし刺激終了後に元に戻りやすい)。
② 内因性オピオイドの放出
低頻度TENS(1〜5Hz)では、刺激によって脳内・脊髄内でβ-エンドルフィン(べーたえんどるふぃん)などの内因性オピオイドが放出されます。効果の発現はやや遅いですが、刺激終了後も数時間効果が持続しやすいのが特徴です。
干渉波療法とは何か
干渉波療法(Interferential Current Therapy:IFC)は、2種類の異なる周波数の交流電流(例:4000Hzと4100Hz)を皮膚から生体に流し、深部で干渉させることで低周波の電流(この場合100Hz)を発生させる電気療法です。
なぜ干渉波が使われるのか
直接低周波の電流を流す場合、皮膚抵抗が大きく、表面に強い不快感が生じやすいという問題があります。干渉波は高周波搬送波(こうしゅうははんそうは)を使うことで皮膚抵抗を下げ、深部に効率よくエネルギーを届けられるのが利点です。
| 特徴 | TENS | 干渉波療法 |
|---|---|---|
| 主な周波数 | 1〜200Hz | 4000Hz前後(搬送波) |
| 深達度 | 比較的表在 | 比較的深部 |
| 皮膚不快感 | やや生じやすい | 少ない |
| 主な目的 | 疼痛管理 | 疼痛管理・血流改善 |
💡 FES(機能的電気刺激)・NMES(神経筋電気刺激)の詳細については、別記事「電気刺激療法FES・NMES・TENSの違い|脳卒中リハビリでの使い分け」で詳しく解説しています。
FES・NMESとの違い
同じ「電気刺激」でも、目的と使い方が大きく異なります。
| 種類 | 主な目的 | 電流強度 | 筋収縮の有無 |
|---|---|---|---|
| TENS | 疼痛管理 | 低〜中(感覚閾値以上・運動閾値以下が多い) | なし(感覚レベルの刺激) |
| NMES | 筋収縮の誘発・廃用予防 | 中〜高(運動閾値以上) | あり |
| FES | 機能動作の補助 | 高(随意運動と同期) | あり(機能的な収縮) |
| 干渉波 | 疼痛管理・深部への電気刺激 | 中 | あり〜なし(強度による) |
臨床での使い分けポイント:
- 痛みが主訴でリハビリに支障が出ている → TENS・干渉波
- 麻痺筋の廃用予防・筋収縮の誘発 → NMES
- 歩行・上肢動作の補助 → FES
FES・NMESの詳細は別記事「電気刺激療法の基礎」をご参照ください。
脳卒中後の疼痛への応用
脳卒中後肩痛(PSSP)へのTENS・干渉波
脳卒中後肩痛(Post-Stroke Shoulder Pain:PSSP)は、亜脱臼・腱板損傷・拘縮・痙縮など複数の要因で生じます。TENS・干渉波は以下の状況で有効です:
- 疼痛により自動運動・介助練習が困難な時期の疼痛コントロール
- 夜間痛・安静時痛の緩和
- 他の物理療法(超音波・温熱)との組み合わせ
Priceらのコクランレビュー(2001年)では、電気刺激療法が脳卒中後肩痛の予防・治療に有意な効果をもつとしており、特に半脱臼を伴う症例での有用性が示されています(Price & Pandyan, 2001, Clin Rehabil)。
中枢性疼痛(CPSP)へのTENS
脳卒中後中枢性疼痛(Central Post-Stroke Pain:CPSP)はTENSの効果が限定的とされるケースも多いですが、軽度〜中等度の症例では疼痛緩和の補助手段として使用されることがあります。高頻度TENSを用いたゲートコントロール効果が一時的な症状緩和に働く可能性があります。
痙縮・筋機能への応用
痙縮に対するTENS
高頻度TENSによる拮抗筋(きっこうきん)への感覚刺激が、相反抑制を介して痙縮筋の興奮性を一時的に低下させる可能性があります。
Ngらの研究(2007年)では、TENSと課題指向型訓練(task-related training)の組み合わせが、TENSなし群と比較して脳卒中慢性期患者の下肢機能を有意に改善したと報告されています(Ng & Hui-Chan, 2007, Stroke)。
ただし「TENS単独で痙縮を大幅に改善する」というエビデンスは現時点では限定的であり、運動療法との組み合わせが基本となります。
廃用性筋萎縮の予防
NMES(神経筋電気刺激)の役割になりますが、低強度の干渉波を使って麻痺側筋群に収縮を誘発し、廃用性萎縮を予防・軽減する使い方もあります。特に急性期から回復期初期にかけて、自動運動が困難な患者さんに使われることがあります。
電極配置の基本
TENS・干渉波療法では、電極(パッド)の貼り方が効果に大きく影響します。
疼痛部位への配置パターン(TENSの場合):
- 疼痛部位を挟む配置(囲む配置):疼痛部位の近位・遠位に電極を配置し、電流が患部を通過するようにする
- 神経走行上の配置:疼痛を引き起こしている神経の走行に沿って電極を配置し、ゲートコントロール効果を最大化する
干渉波療法(4電極配置):
4つの電極を疼痛部位の周囲に置き、2系統の電流が深部で交差するよう配置します。各電極は疼痛部位を中心に対角線状に置くのが基本です。
基本パラメータと使い分けの目安
| パラメータ | 高頻度TENS | 低頻度TENS |
|---|---|---|
| 周波数 | 80〜150Hz | 1〜5Hz |
| 電流強度 | 感覚閾値以上〜運動閾値以下 | やや強め(筋収縮を感じる程度) |
| 主なメカニズム | ゲートコントロール | 内因性オピオイド放出 |
| 効果発現 | 速い(刺激中) | やや遅い(30分以上) |
| 効果持続 | 短い(刺激終了後に減衰) | 比較的長い |
| 使いどころ | 急性〜亜急性の疼痛 | 慢性疼痛 |
使用上の注意と禁忌
感覚障害への配慮
麻痺側(まひがわ)の感覚障害がある場合、刺激の強さを患者さんの感覚報告だけで判断するのは危険です。皮膚の状態を視覚で確認しながら進めます。
主な禁忌:
- ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)装着者(特に胸部・上肢への使用)
- 頸動脈洞(けいどうみゃくどう)部位(刺激による心拍変動のリスク)
- 心臓の真上・跨ぐような配置
- 悪性腫瘍のある部位
- 深部静脈血栓(DVT)の急性期
ほーりーの臨床メモ
脳卒中後肩痛(PSSP)の患者さんに対してTENSを使うとき、私がよく直面してきた問題は「感覚障害があるため刺激強度の設定が難しい」という点です。非麻痺側と同じ感覚を持てないため、「ビリビリ感じる強さ」を患者さんに確認しながら設定できないケースがあります。
そういった場合は、まず非麻痺側と麻痺側の感覚閾値の差を評価してから、低い強度から始めて皮膚の状態を目視確認しながら少しずつ上げる方法を取っています。電流が流れているかどうかは、電極近傍の筋の軽微な収縮や皮膚の赤みで確認できます。「感じないから強くしていい」ではなく、感覚障害があるほど慎重な設定が必要です。
また、TENSは「疼痛緩和→練習参加→機能改善」という流れで使うのが最も効果的です。TENS単独で疼痛を取ることを目標にするより、「TENSで痛みを和らげて、その間に自動介助運動や機能的な練習を入れる」という組み合わせが臨床では実感として効果が高いです。疼痛で練習を拒否している患者さんへの導入手段として積極的に活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 低周波(TENS)と干渉波の使い分けは?
表在の知覚神経刺激(疼痛緩和)が主目的ならTENS(低周波)、深部筋への到達性が必要なら干渉波が向きます。干渉波は2つの中周波を干渉させて深部で低周波として作用させるため、皮膚刺激感が少なく深部に到達しやすいのが特徴です。
Q2. CPSP(脳卒中後中枢性疼痛)にTENSは効きますか?
末梢の侵害刺激が主因の痛みより効果は限定的ですが、補助療法としての位置付けは可能です。CPSPは中枢の感作が主因で薬物療法(プレガバリン等)が中心となるため、TENSは「薬物療法の補助・QOL改善目的」として活用するのが現実的です。
Q3. PSSP(脳卒中後の肩の痛み)には何Hzが推奨ですか?
急性期の鋭い痛みには高頻度TENS(80-100Hz)、慢性期の鈍痛には低頻度TENS(2-10Hz)が一般的です。亜脱臼を伴うPSSPには、肩関節周囲筋へのNMES(三角筋・棘上筋など)が併用されることもあります。
Q4. 何分くらい通電すればいいですか?
TENSの疼痛緩和目的:1回20-30分、1日1-3回が標準的。即時効果(ゲートコントロール)は通電中、後効果(内因性オピオイド系)は20-30分以降にも続きます。長時間連用すると感覚順応で効果が減弱するため、適切なoff時間を設けるのがコツです。
まとめ
- TENS(低周波)は表在の知覚神経刺激、干渉波は深部到達性を活かした使い分けが基本
- FES・NMESの詳細は別記事へ——TENS/干渉波は「疼痛管理」、FES/NMESは「運動・筋収縮」の役割分担で整理
- 脳卒中後の疼痛応用:PSSP(肩痛)には補助療法として有効、CPSPには薬物療法の補助として位置付け
- パラメータの基本:高頻度TENS(80-100Hz・急性期)vs低頻度TENS(2-10Hz・慢性期)、1回20-30分
- 禁忌:ペースメーカー・植込み機器・皮膚障害・感覚障害高度部位。実施前のチェックを徹底する
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免責事項
本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。物理療法の実施については、担当の医師・理学療法士など専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。
参考文献
- 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会. 脳卒中治療ガイドライン2021. 協和企画; 2021.
- Price CI, Pandyan AD. Electrical stimulation for preventing and treating post-stroke shoulder pain: a systematic Cochrane review. Clin Rehabil. 2001;15(1):5-19.
- Ng SS, Hui-Chan CW. Transcutaneous electrical nerve stimulation combined with task-related training improves lower limb functions in subjects with chronic stroke. Stroke. 2007;38(11):2953-2959.
- Nnoaham KE, Kumbang J. Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for chronic pain. Cochrane Database Syst Rev. 2008;(3):CD003222.
- Vance CG, et al. Using TENS for pain control: the state of the evidence. Pain Manag. 2014;4(3):197-209.
- Johnson MI, et al. Transcutaneous electrical nerve stimulation for acute pain. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(6):CD006142. PMID: 26075732
- 奈良勲, 鎌倉矩子(監修). 標準理学療法学 専門分野 物理療法学 第3版. 医学書院; 2018.
- 日本理学療法士協会. 脳卒中理学療法診療ガイドライン第2版. 2021.


















