はじめに

「体外衝撃波って、整形外科で聞いたことはあるけど、脳卒中のリハビリにも使えるの?」

こんな疑問を持ったことはありませんか?

体外衝撃波療法(ESWT:Extracorporeal Shock Wave Therapy)は、もともとテニス肘や足底腱膜炎などの整形外科疾患に使われてきた治療法ですが、近年は脳卒中後の**痙縮(筋肉が過剰に緊張している状態)や疼痛**への応用が注目されています。

この記事では、新人PTの方に向けて、体外衝撃波療法の基礎知識から、痙縮・疼痛への効果、そしてボツリヌス治療や装具療法との組み合わせまで、臨床で役立つポイントをまとめて解説します。



体外衝撃波療法(ESWT)とは?

衝撃波(しょうげきは)ってなに?

衝撃波とは、音速を超える速さで伝わる圧力の波のことです。医療用の衝撃波は体の外から患部に向けて照射され、組織に物理的・生物学的な変化をもたらします。

「衝撃波」と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、X線や強い熱を使うものではなく、適切な強度で使用すれば安全性の高い治療法とされています。

2種類の体外衝撃波

体外衝撃波療法には、大きく分けて2つの種類があります。

集束型(F-ESWT)拡散型(r-ESWT / RSWT)
正式名称Focused ESWTRadial Shock Wave Therapy
衝撃波の広がり一点に集中して届ける放射状に広がって届ける
到達深度深部(数cm)まで届く比較的浅い層に作用
痛みやや強い場合がある比較的マイルド
主な用途深部の筋・腱病変、痙縮筋・筋膜、広範囲の痙縮

臨床では、機器の種類や患者さんの状態に応じてどちらを使うか選択します。脳卒中リハビリの痙縮治療においては、拡散型(r-ESWT)が多く研究・使用されています。

体外衝撃波のメカニズム

体外衝撃波が痙縮や疼痛に効果をもたらすメカニズムについては、現在も研究が進んでいますが、以下のような作用が関与していると考えられています。

  • 機械刺激受容(メカノトランスダクション):物理的な圧力刺激が細胞レベルで生物学的反応を引き起こす
  • 筋紡錘(きんぼうすい)・腱器官への作用:筋の張力センサーに働きかけ、筋緊張を一時的に低下させる
  • 一酸化窒素(NO)産生の促進:血管拡張や炎症抑制に関わる
  • 疼痛抑制(ゲートコントロールや内因性オピオイドの関与):疼痛伝達を脊髄レベルで抑制する

痙縮への応用

なぜ痙縮に体外衝撃波が使われるのか?

脳卒中後の痙縮は、上位運動ニューロン(脳・脊髄で運動を制御する神経)の障害により、筋肉が過剰に緊張した状態です。日常生活動作や歩行の妨げになることも多く、リハビリの大きな課題のひとつです。

体外衝撃波療法は、筋・腱への直接的な物理刺激を通じて筋緊張を低下させることが期待されており、特に上肢(手首・肘の屈筋群)や下肢(下腿三頭筋)への適応で多くの研究が報告されています。

臨床でのポイント

照射部位の選び方

  • 痙縮が強い筋肉のトリガーポイント(筋肉内のしこり・圧痛点)や筋腹(きんふく:筋肉のふくらんだ部分)に照射するのが一般的です
  • 上肢では手指・手関節屈筋群、肘屈筋群
  • 下肢では下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)が主なターゲットとなることが多いです

効果の持続と頻度

  • 1回の照射で一定期間(数日〜数週間)の痙縮軽減効果が報告されていますが、効果の持続には個人差があります
  • 複数回のセッション(例:週1回×3〜5セッション)を計画することが多いです
  • 治療後にストレッチや関節可動域訓練・機能訓練を組み合わせることで、より大きな効果が期待できます

評価のポイント

  • 治療前後のMAS(Modified Ashworth Scale)で変化を確認しましょう
  • 関節可動域(ROM)の変化も合わせて記録しておくと、経過観察に役立ちます

痙縮そのものについては、当ブログの「脳卒中後遺症の「痙縮(けいしゅく)」とは?原因と対処法をわかりやすく」(記事 #8)もあわせてご覧ください。


疼痛(肩の痛みなど)への応用

脳卒中後の肩の痛みと体外衝撃波

脳卒中後の麻痺側の肩の痛みは、亜脱臼(関節が少しずれた状態)・痙縮・肩手症候群(肩の痛みと手のむくみ・色調変化を伴う症候群)などさまざまな原因で生じます。

体外衝撃波療法は、肩関節周囲の石灰沈着や腱板障害への適応でも整形外科領域では広く使用されており、脳卒中後の肩痛に対しても効果を示す研究が報告されています。

臨床でのポイント

照射部位の例

  • 棘上筋腱(腱板の主要な構成要素)、三角筋下滑液包周辺への照射が行われることが多いです
  • 疼痛部位の触診による確認が重要です

注意点

  • 疼痛評価(VAS:Visual Analogue Scale など)を治療前後に必ず記録しましょう
  • 急性期の炎症が強い状態での照射は、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です
  • 照射後一時的に痛みが増強することがあります。事前に患者さんへ説明しておくことが大切です

ボツリヌス治療・装具療法との組み合わせ

ボツリヌス治療(BTX)との組み合わせ

ボツリヌス治療(BTX:Botulinum Toxin therapy)は、ボツリヌス毒素を筋肉内に注射して筋緊張を低下させる治療法です。効果の発現まで数日かかることや、保険適用上の制限(投与間隔・回数)があることなど、単独では制約もあります。

体外衝撃波療法は、ボツリヌス治療と組み合わせることで以下のような相乗効果が期待されています。

  • BTX注射前に体外衝撃波で痙縮筋の緊張をある程度緩めることで、注射がしやすくなる
  • BTX効果が薄れてきた時期に体外衝撃波で補完的にアプローチする
  • BTXの投与間隔の間を体外衝撃波で橋渡しする

ボツリヌス治療と装具療法の組み合わせについては、当ブログの「ボツリヌス治療と装具療法の組み合わせ」(記事 #13)もあわせてご覧ください。

装具療法との組み合わせ

痙縮軽減後には、関節可動域が広がることが多く、そのタイミングで装具療法や歩行訓練を積極的に行うことが重要です

たとえば、下腿三頭筋の痙縮が強くて短下肢装具(AFO)がうまく装着できなかった患者さんでも、体外衝撃波で痙縮が軽減した後に装具装着・歩行訓練がスムーズに進むケースがあります。

体外衝撃波療法単独で終わらせず、装具・歩行訓練・ストレッチなどのリハビリプログラムと組み合わせて計画することが、臨床上のポイントといえます。

装具療法の基礎については「装具療法の基礎知識【短下肢装具の種類と適応を整理する】」(記事 #6)や「長下肢装具(KAFO)の基礎知識と適応」(記事 #15)もご参照ください。


禁忌・注意事項

体外衝撃波療法を使用する際は、以下の点を必ず確認してください。

禁忌(使用してはいけない場合)

  • 照射部位に悪性腫瘍(がん)がある場合
  • 照射部位に骨端線(こったんせん:成長期の骨の成長部位)がある場合(小児・成長期)
  • 照射部位の皮膚に感染・炎症・創傷がある場合
  • 出血性疾患・抗凝固療法中の患者さん(照射部位による)
  • 妊娠中の患者さん(特に腹部・腰部への照射)
  • 心臓ペースメーカーや体内植込み型デバイスがある患者さん(部位による)

注意が必要な場合

  • 感覚障害が著しい患者さんは、照射中の痛みの訴えが乏しくなることがあります。定期的に状態を確認しながら進めましょう
  • 照射後に一時的な腫脹(腫れ)や皮下出血が生じることがあります。事前に患者さんへ説明しておきましょう
  • 体外衝撃波療法の実施にあたっては、機器の取り扱い資格・施設の規定を確認してください

ほーりーの臨床メモ

ESWTは整形外科疾患での使用が先行していますが、痙縮治療への応用は比較的新しいです。ボツリヌス療法が使えない患者さんや、追加治療として組み合わせる形での使用が増えており自身も介入を行っています。

実際に担当した患者さんで、ESWTを受けた後に下腿三頭筋の緊張が一時的に緩み、足関節の背屈可動域が改善したケースを経験しました。使用感は患者さんによりさまざまですが患者さんとコミュニケーションをとりながら安全であることや使用後の変化を一緒に感じながら介入を進めています。

エビデンスはまだ発展途上ですが、痙縮への新たな選択肢として知っておく価値はあると思います。医師が判断し、PTが効果を引き出すという連携の形を理解しておくことが、チームで取り組む際の土台になるでしょう。


よくある質問(FAQ)

Q1. ESWTは脳卒中リハで保険適用されますか?

2026年現在、脳卒中後の痙縮へのESWTは保険適用外です。整形外科領域(足底腱膜炎・難治性骨折等)では一部適用がありますが、リハ目的は自費診療や臨床研究の枠組みでの実施が中心です。

Q2. ボツリヌス治療と併用するメリットは?

ボツリヌスは「神経筋接合部の遮断」、ESWTは「筋線維の伸展性改善・末梢神経興奮性低下」と作用機序が補完的で、相乗効果が期待できます。ボツリヌス後1〜2週でESWTを行うプロトコルが報告されています。

Q3. PTがESWT実施時に気をつけることは?

医師指示のもとで実施するのが原則で、PTは「ROM評価・MAS/タルディウスケール評価・効果判定」を担当することが多いです。実施後は「軟らかくなった筋」を運動療法に活かす視点が重要——ESWT単独より直後のストレッチ・運動課題と組み合わせると効果が定着します。

Q4. 何回くらい治療すれば効果が出ますか?

痙縮への報告では週1回・3〜6回が一般的なプロトコルです。即時効果(数時間〜数日)と持続効果(数週間)があり、効果判定は施術前後だけでなく中長期で行う必要があります。


まとめ

  • ESWTは音圧波を体外から照射する物理療法。脳卒中リハでは痙縮・肩痛・拘縮への応用研究が進んでいる
  • 痙縮への効果機序は「Ia抑制・血流改善・筋線維伸展性の改善」。MAS・タルディウススケールでの効果報告が集積
  • PSSP(脳卒中後肩痛)への応用:腱炎・筋緊張性の痛みに対する補助療法として位置付けられる
  • ボツリヌス・装具との組み合わせで相乗効果:作用機序が補完的なため、多職種連携プログラムに組み込みやすい
  • 禁忌:抗凝固薬使用中・腫瘍・成長期骨端線・心臓ペースメーカー。実施前のリスクチェックを徹底する

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免責事項

本記事の内容は、筆者個人の経験・見解および執筆時点での情報をもとにしたものであり、医療アドバイスではありません。体外衝撃波療法の実施にあたっては、使用機器のマニュアルや最新のエビデンスを確認し、担当医・専門家の指示に従ってください。患者さんへの適応・禁忌の確認は必ず個別に行ってください。

参考文献

  1. Dymarek R, et al. (2016). Effects of extracorporeal shock wave on upper and lower limb spasticity in post-stroke patients: a narrative review. Topics in Stroke Rehabilitation, 23(4), 293–303.
  2. Cabanas-Valdés R, et al. (2020). The effectiveness of extracorporeal shock wave therapy for improving upper limb spasticity and functionality in stroke patients: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil, 34(9), 1141–1156. PMID: 32513019
  3. Wu YT, et al. (2017). Extracorporeal shock wave treatment on shoulder pain and disability in patients with hemiplegic shoulder pain: a randomized controlled trial. Journal of Rehabilitation Medicine, 49(5), 401–408.
  4. Sohn MK, et al. (2011). Spasticity and electrophysiologic changes after extracorporeal shock wave therapy on gastrocnemius. Ann Rehabil Med, 35(5), 599–604.
  5. 日本リハビリテーション医学会(監修)(2021)『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2022〕』協和企画.
  6. 佐藤栄修ほか(2022)「体外衝撃波療法の脳卒中後痙縮に対する有効性の検討」『リハビリテーション医学』59(3), 245–251.
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ほーりー
脳卒中認定理学療法士/臨床13年目/総合病院勤務(回復期・地域包括・緩和ケア病棟)で累計500例以上の脳卒中患者のリハビリを担当。院内では新人PT教育・勉強会講師を継続。日本神経理学療法学会所属。新人PT・若手PTと患者様・ご家族に「現場の知見」をわかりやすく発信しています。