急性期・回復期・生活期の違いとは?【脳卒中リハビリ3つのステージを整理する】

はじめに
「この患者さんは今どのステージにいて、何を目指すべきなのか?」——脳卒中リハビリに関わるPTが最初に理解すべき大きな枠組みが、急性期・回復期・生活期(維持期)の3つのステージです。
各ステージでリハビリの場所・目標・アプローチが大きく異なります。この全体像を知らないまま目の前の患者さんに向き合うと、「今何を優先すべきか」の判断が難しくなります。新人PTが最初に頭に入れておきたい知識としてまとめました。
3つのステージの概要
脳卒中後のリハビリは発症からの時期によって大きく3つに分けられます。
- 急性期:発症〜おおよそ2〜4週間。主に一般病院(急性期病棟)
- 回復期:発症後2〜4週〜6ヶ月。リハビリ専門病棟(回復期リハビリ病棟)
- 生活期(維持期):回復期退院後〜長期にわたって。自宅・施設・通所リハビリ
この区分はあくまで目安であり、病態や個人差によって時期は前後します。重要なのは「今どのステージにいるか」よりも、「今の患者さんにとって何が優先課題か」を考えることです。ただし全体の流れを知ることで、その判断がしやすくなります。
急性期——まず生命を守り、廃用を防ぐ
場所と期間
発症直後に救急搬送される一般病院の急性期病棟が主な場所です。期間はおおよそ発症後2〜4週間ですが、重症度により大きく異なります。
この時期のリハビリの目標
- 廃用症候群の予防:安静臥床が続くと急速に体力・筋力・関節可動域が低下します。早期から動かすことで廃用を防ぎます
- 早期離床:ベッドから起こして座位・立位を経験させることが神経可塑性の観点からも重要です
- 合併症の予防:肺炎・深部静脈血栓・褥瘡など、急性期特有のリスクへの対応
- 基本動作の開始:寝返り・起き上がり・端座位・立位・移乗の練習を発症直後から段階的に開始
急性期PTの特徴と注意点
急性期は医療的リスク管理が最優先です。血圧・脈拍・SpO₂のモニタリング、抗凝固薬や降圧薬の影響、心臓合併症の有無など、リハビリ中止基準(学会ガイドライン)を常に意識しながら進める必要があります。「とにかく動かす」のではなく、「安全に動かす」ことが急性期PTの核心です。
早期離床については、Bernhardt et al.(2015, Lancet)のAVERT試験が重要なエビデンスです。発症24時間以内の超早期かつ高頻度離床(VEM群)が、通常ケア群より3か月時点での予後がやや不良という結果でした。「早ければ早いほど良い」のではなく「早期にゆっくり段階的に」が現代の標準で、PTは血圧・神経症状の変動を見ながら適切なタイミングを判断する役割を担います。
回復期——機能回復の「ゴールデンタイム」
場所と期間
回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)が主な場所で、PT・OT・STが集中的にリハビリを提供します。脳卒中の場合は最長180日(重症例は最長270日)の入院が可能です。
この時期のリハビリの目標
- 機能の最大回復:神経可塑性が最も活発なこの時期に、集中的な練習で機能回復を最大化する
- ADLの自立:食事・更衣・入浴・排泄・移動などの日常生活動作の自立を目指す
- 退院後の生活を見据えた準備:自宅の環境評価・家族指導・福祉用具の検討
- 歩行の再獲得:多くの患者にとって最大の目標。装具・補助具の選定も含めて進める
回復期PTの特徴
回復期は脳卒中リハビリの中で最も「変化を実感しやすい」ステージです。毎日の練習の積み重ねが目に見える機能改善につながる場面が多く、やりがいも大きい一方、目標設定・到達度の評価・退院調整など多くのスキルが求められます。
この時期にいかに練習量(反復回数)を確保できるかが、最終的な機能回復に大きく影響します。前回の記事で解説した神経可塑性を最大限に引き出すのが、この回復期の集中リハビリです。
生活期(維持期)——「暮らし続ける」を支える
場所と期間
回復期病棟を退院した後、自宅・グループホーム・老健などで生活しながら、訪問リハビリ・通所リハビリ・外来リハビリなどを利用して継続します。期間に上限はなく、生涯にわたることもあります。
この時期のリハビリの目標
- 獲得した機能の維持:使わないと機能は低下します。動ける状態を「維持」することが重要な目標になります
- 社会参加と生活の質(QOL)の向上:買い物・趣味・外出・地域活動など、その人らしい生活の継続を支援
- 介護負担の軽減:家族が適切に介助できるよう指導・支援する
- 二次的合併症・再発の予防:転倒予防・血圧管理・生活習慣の見直し
生活期PTの特徴
生活期ではその人の「生活」全体が見えてくるステージです。自宅の間取り・家族構成・趣味・仕事など、生活文脈に根ざした介入が求められます。「機能が少し落ちてきた」「外出が減った」といった小さな変化に気づき、悪化を防ぐ視点が重要です。
3つのステージを横断して理解する
大切なのは、各ステージは「独立したもの」ではなく連続しているという視点です。急性期での廃用予防が回復期の出発点を高め、回復期での集中リハビリが生活期での生活の質を決める。この連続性を意識することで、患者さんの「今」だけでなく「これから」を見据えた関わりができるようになります。
また回復期を過ぎても機能は改善しうるということも押さえておきましょう。6ヶ月以降も適切な介入で機能改善が得られることは多くの研究で示されており、「もう回復期は終わった」と諦めないことが大切です。
ほーりーの臨床メモ
新人のときに一番戸惑ったのは、急性期から回復期に転院してきた患者さんが「前の病院ではもっとやってもらえた」と比較されたことでした。ステージごとに目標と優先事項が変わることを患者さん・家族と共有しておかないと、不満につながりやすいと思います。
回復期では「1日9単位できる」という強みがありますが、その中でどこに時間を使うかが問われる。全部を練習しようとすると浅い介入になりやすく、介入の優先順位の選択もPTには必要になってくると思います。
生活期では「月に数回のリハビリ」という現実の中で、患者さん・家族が自分たちで管理できる力を育てることに転換する。「治す」から「支える・教える」へのPTのマインドシフトが必要でしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 急性期と回復期の境目はどこですか?
明確な日数の境目はありませんが、一般的には「発症〜2週間」を急性期、「2週間〜6か月(最大)」を回復期と呼びます。実態としては「急性期病院から回復期リハ病棟へ転院した時点」を境目とすることが多いです。脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕でも「時期で区切るより患者さんの状態で判断する」スタンスが推奨されています。
Q2. 回復期は何か月で退院になりますか?
脳血管疾患は「発症から150日以内」が原則で、高次脳機能障害を伴う場合は180日まで延長可能です。実際の入院期間は患者さんの状態とゴール設定によりますが、平均すると2〜4か月が一般的です。退院後は生活期リハ(訪問・通所)へ移行します。
Q3. 生活期リハで「訪問」と「通所」どちらを選ぶべきですか?
選択基準は「外出可否」「リハビリ目的」「家族支援」です。屋外移動が困難・家族の負担軽減が必要→訪問、人との交流・集団活動・浴室の利用→通所、というのが目安です。両方併用するケースも増えており、ケアマネジャーと相談しながら最適な組み合わせを設計します。
Q4. 新人PTが各ステージで意識すべき視点は?
急性期は「リスク管理+廃用予防」、回復期は「機能回復+ADL自立度の最大化」、生活期は「生活継続+社会参加支援」が大枠です。共通するのは「次のステージへどう橋渡しするか」という視点で、各ステージで完結せず、退院後の生活までイメージして介入計画を立てると、患者さんの全人的支援につながります。
まとめ
- 脳卒中リハは「急性期・回復期・生活期」の3ステージ。それぞれ目的とPTの関わり方が異なる
- 急性期は「リスク管理+廃用予防」。AVERT試験から「早期にゆっくり段階的に」がポイント
- 回復期は「機能回復のゴールデンタイム」。入院期間最大150-180日でADL自立度を最大化する
- 生活期は「暮らしを支える」。訪問・通所・デイサービスの選択は外出可否と目的で判断する
- 3ステージ横断で「次への橋渡し」を意識するのがPTの大切な視点
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免責事項
本記事の内容は、筆者個人の経験・知識および参考文献に基づく情報提供を目的としており、個別の医療・リハビリテーションに関するアドバイスではありません。症状や治療方針については、必ず担当の医師・理学療法士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。
参考文献
- 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会編. 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕. 協和企画, 2025.
- 日本リハビリテーション医学会監修. 脳卒中後のリハビリテーション. 医学書院, 2023.
- The AVERT Trial Collaboration group. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55. doi:10.1016/S0140-6736(15)60690-0

















